Minimal (ミニマム)

ラスベガス出身のハードコア・バンドの5曲入りのデビューEP。サウンドはHave Heart(ハヴ・ハート)やLifetime(ライフタイム)あたりの影響を色濃く感じるハードコアの骨太のサウンドにメロディックを加えたサウンド。Bab Religon(バッドレリジョン)とはタイプが全く異なるスタイルのメロディック・ハードコアだ。

 

それにしてもその前向きなヴァイブに満ちあふれている。サウンド自体からはユースクルーからの影響は全くうかがえないが、歌詞の内容はGORILLA BISCUITS(ゴリラビツケッツ)の影響が色濃いがポジティヴ・ハードコアそのもの。“人は変わる”、“前進し続ける”、“私は振り返らない。過去にこだわらない”といった内容からは、恐怖や困難に立ち向かう姿勢や、過去の栄光を断ち切り前へに進んでいく強い意志を感じ取ることができる。

 

最小限と名付けられたバンド名からは、人生は多くのものを手に入れるのではなく、必要最小限のものがあれば、幸せな人生を送れるメッセージが込められているように思えた。フルアルバムが期待のできる有望な新人だ。

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LA Needs a Riot: Bands from the Los Angeles Underground
『LAニーズ・ア・ライオット:バンドズ・フロム・ザ・ロサンゼルス・アンダーグランド』

アメリカはロサンゼルス近郊にあるアンチ・ファシズムやフェミニズム、動物愛護などのポリティカルな姿勢を貫いているレーベル、Riot Ready Records(ライオット・レディー・レコーズ)から2枚目となるコンピレーション。

 

日本語で『LAは暴動を必要としている。ロサンゼルスのアンダーグランドのバンドによって』。と名付けられたタイトルには、ポリティカルな姿勢が貫かれている。コンピレーションで売り上げた収益のすべてを、反レイシズムや刑務所での虐待、社会復帰などに支援しているコミニティー、Dignity&Power Nowに寄付されるそうだ。

 

ここに収録されているアーティストは、オーソドックスな初期パンクのThe Lungs(ザ・ラングス)から、ディスチャージ系のハードコアのLoss for Concern(ロス・フォー・カンサー)、アナーコパンクのDrGhost(ドクター・ゴースト)、シンガロングスタイルでoiパンクのHardknocks(ハードノックス)、スカコアのCaptain Smooth Talk(キャプテン・スヌース・トーク)、サイコビリーのSkarletto and the Apocalypse(スカーレット・アンド・ザ・アポカリプス)、ランシド系のメロディック・パンクのBad Bruno(バッド・ブルーノ)にいたるまで、LA各地の無名なパンク・アーティストによる総勢45バンドが収録されている。どのバンドもパンクが明るく開放的なメロディックパンクに変わる前の、クラシックな初期パンク・サウンドを展開している。

 

変わったところではブルータルデスメタルのICM、ヒップホップのBorn in Demise (ボーン・イン・デマイズ)、ブラストビートのHero Injection (ヒーロー・インジェクション)など、異なるジャンルのサウンドを展開しているバンドもいる。なかにはポリティカルな姿勢を微塵も感じないアーティストもいるが、だがどのバンドも扇情的で攻撃的なサウンドだ。そこには悲しみや弱さなどネガティヴな感情がみじんもない。なによりアンダーグランド特有の路地裏のやさぐれた匂いが漂っているのだ。現在では失われたパンクの熱量や本来のあるべき姿を体現したコンピなのだ。

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AMERICAN NIGHTMARE(アメリカン・ナイトメア)

昨年の3月に出たじつに15年ぶりとなる3作目。ボストンのオールドスクール系ハードコアバンドで、03年にはバンド名をGIVE UP GHOST(ギブ・アップ・ゴースト)変更させられるハプニングもあったが、今回、AMERICAN NIGHTMARE (アメリカン・ナイトメア)名義で発表。

 

サウンド的にはパンクとハードコアの中間を行くハードコア・パンクだが、スピーディーで激しいギターに、全速力を出し切る熱く衝動的なボーカルと、シンガロングの気合の入った展開は、新しいタイプのエモーショナル・ハードコア・バンドでもあった。オールドスクール・ハードコアからLifetime(ライフタイム)やCOMEBACK KID(カムバックキッド)のメロディックでエモーショナルなハードコアに繋がっていく、橋渡し的な位置にいる存在のバンドでもあった。

 

そして15年ぶりとなる今作では、相変わらず勢いと迫力に満ちたサウンドを展開している。だがいままでの作品と比べると、勢いや衝動よりも、新しいことにチャレンジする姿勢が目立つ。とくにメロディックなギターパートが増えた。金属のような硬質なボーカルに火花のようにきれいに飛び散るメロディーや、ドゥームのようなドロドロとした重たく暗い曲などがあり、ハードコアパンクの衝動と勢いを保持しながらも、新しい要素を加えている。

 

おそらく新しいことにチャレンジした理由には、バンド活動を続ける熱意と衝動を取り戻すためではないか。活動を休止した理由のひとつに、伝えたい想いや、演りたいことをやりきったという実感がどこかにあったはずだ。マンネリ化した状態で、活動を続けていくモチベーションを保つことが困難だったのだろう。だから今回新しいことにチャレンジしたのではないか。結果、新しい挑戦が功を奏し、アメリカン・ナイトメアというバンドをワンランク上のバンドに成長させた。再結成で15年ぶりに発表した作品でも、成長できることをあらためて証明した。意欲に満ちたいい作品だ。

CANDY(キャンディー)
『 Good To Feel(グッド・トゥ・フィール)』

ニューヨークはバッファロー出身のハードコア・バンドのデビュー作。バッファローといえば、SNAPCASE(スナップケース)やMalfunction (メルファンクション)など、チュガ・チュガ・バッファロー・ハードコアと呼ばれるシーンがあり、一般的なハードコアとは一線を画した独創的なサウンドを展開しているバンドが多く存在する。

 

彼らの場合、パワーヴァイオレンスとブルータルやグランドコアにハードコアパンクを過激なノイズに融合させたサウンド。NAILS(ネイルズ)やModern Pain(モダン・ペイン)に代表される新世代のノイズコアを展開しているバンドなのだ。その新世代のノイズコアとでもいうサウンドに、UNSAINE(アンセイン)のジャンクや、ブラストビート、インダストリアル、スラッシュメタル、PIL(パブリック・イメージ・リミテッド)の1stをよりヘヴィーに、よりノイジーに進化したサウンドを、ミキサーにぶち込み、暴虐なまでにノイジーにブラッシュアップしたのが、このバンドの特徴だ。

 

重くうねるベースや、呪詛をまき散らすボーカル、音が反響し耳をつんざく爆音ノイズギターが織りなすサウンドは、まるで汚れた地下室の一画から静かに放火され炎が拡大していくような、暴力的なトランス状態の狂騒を感じる。

 

いろいろな要素を取り入れ、実験的な意欲にあふれる素晴らしい作品。新世代のハードコアを代表するオリジナルティあふれる素晴らしい作品だ。

Turnstile(ターンスタイル)
『TIME & SPACE(タイム&スペース)』

TIME & SPACE

ボルチモア出身のポストハードコア・バンドの18年に発表した2作目。今作でUS Billboard Heatseekers(ビルボード・ヒートシーカーズ)チャートで1位を獲得し、大手インディーレーベル、Roadrunner Records(ロードランナー・レコーズ)に移籍するなど、出世作といっても過言でない作品に仕上がった。

 

彼らの特徴といえば、ヒップホップな歌い方や変則的なリズムのギターなど、Rage Against the Machine(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)から多大な影響を感じるサウンド。ポスト・ハードコアに現代風のアレンジを加えた90年代のミクスチャー・ロックを、現代に進化させたサウンドなのだ。

 

前作ではレイジアゲインスト・ザ・マシーンからの影響が抜け入れない90年代のラップメタルなサウンドを展開していた。そんな前作と比べると、今作ではMINOR THREAT(マイナースレット)のような2ビートで直截的なハードコアを中心に、The Stooges(ザ・ストゥジーズ)のような扇情的なピアノや、マラカス、不協和音なコーラスを加え、より過激に、よりオリジナルティーのあるサウンドに仕上がっている。

 

終始ハイテンションでたたみかけていくアグレッシブなサウンド。そこには苛立ちに似た焦燥感がある。歌詞はシンプルで直截的。歌われている内容はハイプレッシャーや逃れられないなど、自分の内面世界。弱い自分を奮い立たせ戦っていく自己啓発的な内容が多い。

 

シンプルで簡潔に直截していく攻撃性や、弱い自分や体制側に戦っていく姿勢には、ひさびさにパンクの熱い闘争心を感じた。勢いと迫力が聴くものに勇気と活力を与えてくれる熱気に満ちた作品なのだ。

WARFARE(ウォーフェア)
『 Declaration(デクラレーション)』

Intro

近年、MINDFORCE(マインドフォース)やFURY(フューリー)などのバンドを輩出し、ハードコア界で注目されているレーベルTriple-B Records。Triple-B Recordsオールスターとでも呼ぶべきバンドのデビューEP。

 

TRAPPED UNDER ICE(トラップド・アンダー・アイス)のギターリストJustice(ジャスティス)を中心にDeath Injection(デス・イジェクション)、Pressvre(プレジャー)、Nick X(ニック・X)、Fury(フューリー)、Glory(グローリー)、Triple-B RecordsのオーナーSamなどのメンバーによって結成。

 

そのサウンドは、タフでいかつい怒声ボーカルはAgnostic Front (アグノステッィク・フロント)の影響が強い、パンクとハードコアの中間であるハードコアパンク。ファストでゴリゴリな2ビート2コードのハードコアな曲の“Membership Revoked(メンバーシップ・リヴォート)”と“Rabbit Hole(ラビット・ホール)”。スピーディーな曲がスローテンポにサビに変わる“Nothing To Show(ナッシング・トゥ・ショウ)”など、オールドスクールなハードコアという括りなのかで、7 Seconds(7セコンズ)のようなファストな曲からDischarge(ディスチャージ)のような2ビートの曲まで、バラエティー豊かなサウンドに仕上がっている。そこにはオールドスクールなハードコアをいろいろと聞き込んでいる形跡がうかがえるのだ。

 

挑発的なサウンドだが、歌詞もそんな内容が多そうだ。Rabbit Hole(困難な状況)、Dead Scene(終わったシーン)、Membership Revoked(会員の失効)などの曲のタイトルからは、困難な状況を終わらせ、新しくも一度甦らす宣言のような、挑戦的な思いを想像させる。

 

古い時代のいいところだけを凝縮したハードコアな作品だ。