GETDEAD(ゲットデッド)
『Dancing with the Curse (ダンシング・ウィズ・ザ・カース)』

サンフランシスコはベイエリア出身のパンク・バンド4年ぶりとなる4作目。ベイエリアはブルーカラーの多い地域で、GREENDAY(グリーンディ)やRANCID(ランシド)などを輩出した地域としても知られている。

 

GETDEAD(ゲッドデッド)も、ベイエリアのバンドに多い、ストリートな不良の匂いがする、やさぐれたパンクバンドだ。そのサウンドからは、Operation Ivy (オペレーション・アイヴィー)やRANCID(ランシド)、Swingin’ Utters(スウィンギン・アターズ)などの労働階級をベースにした、ストリートパンクからの影響を色濃く感じる。そこにアコースティック・ギターを中心としたアイリッシュ・フォークやバルカン音楽、スカ、ネオ・アコ―スティックなどの要素を加え、オリジナルティーを確立した。

 

そして4作目となる『Dancing with the Curse (ダンシング・ウィズ・ザ・カース)』では、いままでになくパンクなサウンドに変貌を遂げた。前作まではアコースティック・ギターが中心のサウンドで、大人しくやさしいイメージがあったが、今作ではロックギターが中心。スカ・パンクな曲から、ストレートなパンクな曲など、総じて激しくエネルギッシュな曲が多い。

 

激しくエネルギッシュな作品に仕上がっているが、前作までの個性は失われていない。スカ・パンクな曲が多いが、50~60年代のノスタルジックな旋律と、パンクの激しさをうまいこと融合している。

 

アルバム全体には、シリアスな雰囲気に満ちている。しゃがれた声のボーカルは、いままでカラッとした枯れた円熟味に満ちていた。だが今作ではシリアスな歌声とエモーショナルな叫び声に変貌を遂げ、怒りに満ちた超高速のスタナンバーの“Hard Times(ハードタイムス)”や、アコースティックの“Glitch(グリッチ)”からは、緊迫感と憤りに似た感情を感じ取ることができる。まるで虐げられた者の抵抗のような、攻撃性がそこにはあるのだ。

 

エネルギッシュでフラストレーションを爆発させた作品。攻撃的に踏み出した今作は、いままでの作品のなかで一番激しくパンクをしている。最高傑作と断言できるほど充実した内容なのだ。

Zao(ゼイオー)
『Preface(序文): Early Recordings 1995​-​1996 』

 

ペンシルベニア出身のニュースクール系ハードコア・バンドの95年から96年までの未収録曲を集めた初期音源集。

 

初代シンガーEric(エリック)と2代目Shawn(ショーン)が在籍時音源を収録した内容で、初期のデモやOUTCAST(アウトキャスト)やTHROUGH AND THROUGH(スルー・アンド・スルー)とのスプリットの曲も収録。作品を重ねるごとにメタル度とギターのテクニックが増し、より過激でヘヴィーに進化を遂げてきた。初期の作品を収録した今作では、EARTHCRISIS(アースクライシス)やOVERCAST(オーバーキャスト)、Rage Against the Machine(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)やSTRONGARM (ストロングアーム)などのバンドからの影響を感じるシンプルでメタル色の強いニュースクール系ハードコアを展開している。

 

バンド名のZAO(ゼイオー)とはギリシャ語の(ζάω)で「生きること」という意味を持っているそうだ。クリスチャン・ハードコアと呼ばれたZAO(ゼイオー)の初期のころは、神の真言や平和について歌っていた。まだクリスチャンの影響が強かった初期のころの作品をコンパイルした今作では、終始スローテンポで絶望や怒りといった感情を刻んでいる。ここでは“闘争”や“戦い”、“悲しみ”に“抑圧”など、世間と戦っていく内容が目立つ。ここでいう闘争や戦いとは、組織化された教会から、はじき出されたと感じている聴衆の気持ちを代弁している。いうなら商業主義に走った教会組織との戦いといえる内容なのだ。

 

スローテンポで怒りを刻み、ノイジーで熱く燃え滾るようなハードコア。よりテクニカルに進化を遂げた近年のZAO(ゼイオー)も決して悪くはないが、初期のころは真っすぐで純粋で理念に燃えた初期衝動にあふれた作品を展開しているのだ。

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TOUCHE AMORE(トゥーシェ・アモーレ)
『Lament (ラメント)』

ロサンゼルス出身の激情エモ・バンドの6作目。前作でも書いたが彼らのサウンドとは、スクリーモがメタルの一ジャンルとして形骸化する前の、激情コアなサウンドを現代風にアレンジし、よみがえらせたバンドだ。いうならHeroin(ヘロイン)やPg99、Antioch Arrow(アンティオック・アロー)などのGravity Records周辺のバンドを、メロディックにブラッシュ・アップしたサウンドといえるだろう。

 

4作目の『Stage Four(ステージ4)』では14年に末期癌で亡くなったボーカルのボルムの母親について歌い、バンドはおもに個人的なトラブルから起こる絶望や苦悩について歌っている。もがき憤り葛藤しながら前へ進んでいる姿が印象的なバンドなのだ。

 

嘆く、憂い、悲しみといった意味を持つ『Lament(ラメント)』というタイトルが付けられた5作目では、いままでになく静けさと悲しみに満ちた作品に仕上がっている。叫び声を中心とした激情を吐露するバンドだったが、今作では勢いや衝動よりもセンシブな感情を重視。“Lament(ラメント)”では、冷たく悲しみと憂鬱さに満ちたメロディーが印象的で、“Reminders(リマインダー)”では、シンガロングやエモの静と動の感情がアップダウンをする曲調を取り入れている。“Limilight(ライムライト)”では、低音なメロディーのギターが印象的なミニマムな演奏で功名心にとらわれ疲れ切った心情を赤裸々に吐露。そして最後の“A Forecast(ア・フォアキャスト)”は、穏やかで落ち着いたピアノから始まるバラード曲で、失ったものや失敗から学んだことなどの悔悛に満ちた想いを素の声で淡々と歌っている。

 

いままでの作品のように、激情という衝動で突き抜けるのではなく、立ち止まって熟考しているような思慮深さが加わり、バラエティー豊かな作品に仕上がっている。激情と静けさのコントラストや悲しみと憤り、憂いと悔悛といった2面性があり、深い感情を表現しているのだ。

 

ベースにある激情は保持しながらも、その反対側にある静けさや穏やかさといった要素を加え、より深みが増している。よりカラフルに、よりメロディックに、さらに深化した作品なのだ。