Shackled (シャックルド)
『Doubt Surrounds All (ダウト・サラウンド・オール)』

ニュージャージ出身のニュースクール・ハードコア・バンドのデビュー作。90年代のニューヨーク・ハードコアから進化したバンドで、Cro-Mags(クロ-マグス)やMADBALL(マッドボール)やEARTH CRISIS (アース・クライシス)からの影響を色濃く感じる。

 

終始ミディアム・テンポで重さを重視したニュースクール・ハードコアで、ギャングのようなシリアスさと緊迫感に満ちた雰囲気が彼らの特徴だ。サウンドはメタルよりに進化をしたのではなく、よりハードコアに深化している。ノイジーでテンポの速いリフ。メタルのようなギターソロ。緊迫感を紡ぐ静かにうねるベース。シンガロングスタイルのボーカル。目新しさこそさほどないが、古き物と古き物を掛け合わせ、彼らしかないオリジナルティーなハードコアを展開している。

 

『疑いはすべて取り除く』というアルバム・タイトルや<手錠、足枷をかけられた、拘束された>という意味を持つバンド名からも分かる通り、彼らが表現していることは、裏切りや抑圧された人生観について歌っている。

 

“Nothing Ever Came(何も来なかった)”では、<俺は自分自身を疑い始めている >と歌い、“Doubt Surrounds All (疑いはすべてを取り巻く)”では、<一人で苦しむために残された>と歌っている。全体的に、内省的で煩悶している内容が目立つ。そこには善悪と葛藤し、弱い自分との闘いがある。弱い自分と闘い打ち勝つ精神力、孤高の力。それが彼らの個性なのだ。

 

真冬のコンクリートから出る冷気に、寒さで身が凍えながら、一人でストイックに自分を追い込んでいく孤高の姿勢。ニュースクール・ハードコアらしい、そんな雰囲気が漂ったバンドなのだ。

EKULU (エクウス)
『Unscrew My Head (アンスクリュー・マイ・ヘッド)』

ニューヨーク出身のクロスオーバー・リバイバル・バンドのデビュー作。初期のころは、スレイヤーの影響が強かった西海岸クロスオーバだったが、今作ではオリジナルティー獲得している。

 

ザクザク刻むメタルのリフにニューヨークハードコア特有のハードコアの矢継ぎ早な歌い回しを融合したサウンド。スピード感こそさほど速くないが、スラッシュメタルのリフにオールドスクール・ハードコアの歌い回しという、両者の古臭さが合わさり、いままでになかった新しいスタイルを提示している。そこにはシリアスやギャングの不良性やアグレッシヴな攻撃性もない。スポーティーなノリにも似た熱さ全開のハードコア。どことなくファナティックに楽しもうぜという姿勢が伺える。

 

クロスオーバー・リバイバル・バンドのなかではPOWER TRIP(パワートリップ)に近い位置にいるバンドだが、微妙に立ち位置が違う。天然ボケにも似た独特なクロスオーバーなのだ。

Militarie Gun (ミリタリー・ガン)
『All Roads Lead To The Gun Ⅱ(オール・ロードズ・リード・トゥ・ザ・ガン 2)』

ロサンゼルス出身のエモーショナル・ハードコア・バンドの3作目のEP。パワーバイオレンス・バンド、Regional Justice Center(リージョナル・ジャスティス・センター)のドラムで活躍しているIan Shelton(イワン・シェルトン)を中心に結成されたバンドで、ここではギターを中心としたメロディックなサウンドを展開している。

 

全作品を通してThe Jesus Lizard(ジーザス・リザード)やJAWBOX(ジョーボックス)やBurning Airlines (バーニング・エアラインズ)に影響を受けたエモーショナル・ハードコアを展開している。ギターメロディーが中心のバンドで、サイケデリックに歪んだメロディーから、透き通ったメロディー、アコースティックギターのメロディーにいたるまで、ギター・フレーズにこだわりを持ったバンドなのだ。

 

サイケデリックに歪んだメロディーや透き通ったメロディーが魅力の『Demo(デモ)』と『My Life Is Over(マイ・ライフ・イズオーバー)』。アコースティック・ギターを取り入れた『All Roads Lead To The Gun(オール・ロードズ・リード・トゥ・ザ・ガン)』と、過去の作品と比べると、今作では激しいギターが中心のエモーショナル・ハードコアなサウンドを展開している。

 

叩きつけるスローテンポなドラムに、シャウトするボーカルとギターが、混然一体となって音の刻印を刻むように進んでいく。“Disposable Plastic Trash(ディスポーザブル・プラスティック・トラッシュ)”はベースのみとフレーズとギターのみのフレーズが交互に入れ替わる展開で、一歩間違えれば音の調和が崩れる際を、無理を承知で渡るような、挑戦的な姿勢がうかがえる。“Background Kids(バックグラウンド・キッズ)”は、ギターメロディーを全面に出した曲で、神経質に響くギターのメロディーとボーカルの熱さというコントラストが、退廃と希望が混然一体なったような不思議な雰囲気を醸し出している。どの曲も実験的なサウンドで、オリジナルティーあふれる独特なサウンドを追求している。

 

メロディックなサウンドとは対称的に、<軍隊の銃>と名付けられたバンド名や、『すべての道は銃に通ず』というEPでは、銃による虐殺をコンセプトにしている。歌詞は残虐なイメージや退廃的で絶望的な内容が多い。“私の人生は終わった”や“使い捨てプラスティックゴミ”、“進歩的な社会のための新しい法律”では、<麻薬や環境破壊、失望による怒りと暴力>などについて歌い、人間の醜いダークサイドを歌詞に取り上げている。

 

熱く明るくメロディックなエモーショナル・ハードコアに人間のダークサイドを歌った歌詞。まさに二律背反する内容で、ジキル博士とハイド氏のような解離性同一性障害という病んだ精神を表現したバンドなのだ。サウンドと歌詞を含め従来のハードコアパンクの枠を超えた音楽性を追求しているバンドなのだ。