Repeat Offender(リピート・オフェンダー)
『Demo (デモ)』


ロスアンゼルス出身のハードコア・バンドのデビュー・デモ。アメリカでは珍しい、CRASS(クラス)やDischarge(ディスチャージ)、Sham 69 (シャム69)などのイギリスのパンク/Oi/ハードコアから影響を受けたバンド。バリバリ響くノイズギターを中心に、骨太で荒々しく扇情的なサウンドを展開している。

 

【犯罪を繰り返す者】というバンド名が示す通り、ギャングのような精神姿勢をもったハードコア・バンドだ。“Prime Suspect(第一容疑者)”では、<あなたは誰の味方なの?>と歌い、“con job(詐欺の仕事)”では、<一度だけ俺をだましたらお前の恥、二度も俺をだましたのなら俺の恥>と歌っている。また“Debt Collection(債権回収)”では、<借金を取りに来る>債権回収者の気持ちと歌い、“Fraudulent(詐欺)”では、<誇りはない/あなたは臆病者です/あなたに芯がないことを知っている>と、と詐欺師の心理を歌っている。

 

そこに気合や怒りなどの感情や熱量を感じ取ることができるが、向かっている方向があまりにもネガティヴだ。詐欺師の心理や、騙されるものの愚かさ、猜疑心からくる怒りなど、負にまみれた感情だ。

 

ハードコアといえば、マッチョな暴力性やギャングのような不良性、ストレートエッジのような禁欲性に、政治やアンチ・レイシズムなどのポリティカルな内容を歌ったバンドに大別されるが、そのなかでも彼らのアティテュードは異質だ。お金、猜疑心、裏切りなど、あまり人に共感されることのないテーマを歌っている。

 

サウンド自体にこそ目新しはないが、今まで歌われることのなかったテーマを掲げ、ここまでお金にまつわる内面心理を持ったバンドもいないだろう。

こちらからダウンロードできます。

The Ghost Inside(ザ・ゴースト・インサイド)

ロサンゼルス出身のメタルコア・バンドの、じつに6年ぶりとなる5作目。彼らといえば、Unearth(アンアース)やShadows Fall(シャドウズ・フォール)から影響を受けたメタルコアをベースに、メロディックパート加えた、メロディック・ハードコア/メタルコアと呼ぶべきサウンドが特徴のバンドだ。プログレッシブなメロディーを取り入れた『Returners (リタナーズ)』。よりヘヴィーにスクリーモのような静と動のパートを取り入れた『Get What You Give(ゲット・ワット・ユー・ギヴ)』。エモーショナルで叙情的なメロディーをブラッシュアップした『Dear Youth(ディア・ユース)』と、ベースとなるメタルコアの部分は変わらないが、つねにメロディー追求し研鑽してきた。

 

コンスタントに作品を発表し順風満帆な活動を続けてきた彼らだが、15年11月にバンドメンバーが乗っていたツアーバスがテキサス州にて衝突事故を起こす。運転手が亡くなり、ドラムのAndrew Tkaczyk(アンドリュー・トゥカチュク)が片足を切断する大怪我を負った。活動が危ぶまれるほどの大事故だったが、彼らは19年7月、不死鳥のようによみがえり、地元ロサンゼルスで復活ライヴを行い、活動を再開した。

 

そんな大事故から奇跡の復活を遂げた今作は、まちがいなく彼らの最高傑作だ。とくにメロディーに磨きがかかり、神秘的な美しさが増している。深く沈んでいく重いギターのリフとうめき声のようなデス声からは、嘆きや憤りを感じ、暗闇のなかで一縷の光が指すようなメロディーからは、憂いや戸惑い、恐怖といった感情を感じる。そこにはメタルコアにありがちな怒りや衝動や攻撃的でアグレッシブな闘争心よりも、緊迫した空気を紡ぐ重苦しいムードがアルバム全体を支配している。

 

今作では事故を起こし復活した心境がテーマになっている。歌詞は生死の狭間をさまよった経験がリアルに綴られ、“1333”では<灰の中から生き返った>と歌い、“Still Alive(まだ生きている)”では<戦いをあきらめない/人生の二度目のチャンス>と、歌っている。そしてアルバムのハイライトとなる“Aftermath(災害のあと)”では、<あの時の光景と騒音/上昇と下降/ここで終わりなのか?俺は再び自分を取り戻すことができるのか?/悲劇に打ち勝つのだ!>と、事故のあと人生すべてが変わったしまった現状を、赤裸々に語っている。不死鳥のごとく蘇えり、劇的な復活を遂げたが、現在もAndrew(アンドリュー)は、義足でドラムを叩き続けている。健常で良かったころの過去には二度と戻ることが出来ない。いまある不幸とハンデを受け入れ、生きていくしかない。現状と向き合い、固い決意で生きていく覚悟。そんな気迫に満ちたアルバムなのだ。

 

彼らはいまも絶望的で困難な状況が続いている。幸せで楽しいと感じることは、この先ないかもしれない。それでもあきらめず、必死にもがき生きている。限りある命を燃やし続けている。一度大きな失敗すると二度も元に戻れない日本社会で、健常な体を失っても立ち向かっていく彼らの姿勢は、とても参考になる。抜け出すことのできない地獄の苦しみ。そんな地獄と向き合い受け入れながら、生きていく方法をこの作品で示唆しているのだ。

ACxDC(アンチクライスト・デーモンコア)
『Satan Is King (サタン・イズ・キング)』

ロサンゼルス出身のパワーバイオレンス・バンドの2作目。Antichrist Demoncore(アンチクライスト・デーモンコア)を略してACxDC。かの有名なオーストラリアのロック・バンド、ACxDCと同じ表記をしているバンドだ。

 

日本語で<反キリストの悪魔コア>というバンド名が示す通り、サタニズムを掲げている。そこにヴィーガン・ストレートエッジを加えた。サタニズムとヴィーガン・ストレートエッジの奇妙な融合というコンセプトを掲げ、モノクロのジャケットで反戦や反核を掲げたバンドが多いパワーバイオレンス界でも、若干異なる立ち位置にいるバンドなのだ。

 

サウンド的にはストレート・エッジやサタニズムのバンドからの影響はあまり感じられない。ベースにあるのはSPAZZ(スパッツ)からの影響。そこに怨霊のようなドスの効いた低音と、高音の悲鳴、自然に歌う3種のシンガロングや、Discharge(ディスチャージ)のような2ビートと2コード、ブラストビートと重く金属質なギターを加え、ファストで、迫力のあるサウンドに仕上げた。古典的なハードコアをパワーバイオレンスのファストなサウンド融合した。画一的なサウンドになりがちなパワーバイオレンス界で、バラエティー豊かなサウンドを展開しているバンドなのだ。

 

『サタンは王様』と名付けられた今作は、Kanye West(カニエ・ウェスト)が発表したアルバム『JESUS IS KING(ジーザス・イズ・キング)』のアンチテーゼとして、タイトルが付けられたそうだ。「サタンは反抗的な解放者で、キリストは権威主義者で服従を求める」。と発言し、神のための創造はサタンのための破壊に変わり、神への忠誠はサタンへの反逆に変わっている。そこには子羊のような従順さや救いを求めるよりも、敵対しても助けを求めず自分の力の切り抜けるといった真逆の考えがある。権力への反抗、不快で邪悪なサウンドの追求といった、キリスト教の教えや音楽と真っ向から対立している。

 

前作と比べ、よりノイジーに、より激しく進化した。高音の叫び声はより絶叫度を増し、低音のうねり声はより邪悪さを増している。スローテンポからいきなり雪崩のようなブラストビートに急激にピッチが変わりカオスと化していく。ところどころにMADBALL(マッドボール)のようなニュースクール・ハードコアからの影響を感じる。パワーバイオレンスとニュースクール・ハードコアを合わせたようなサウンド。そこには苛烈な激しさと鼓膜が破れるようなノイズにまみれた邪悪さ感じる。

 

タイトルやロゴのパクリながら、それを嘲笑に変えるシニカルで悪意に満ちた独特のユーモアが特徴的。パワーバイオレンス界でも独特なサウンドを展開しているバンドで、死神をコンセプトにしたTwitching Tongues (トゥィッチング・タングス)と同様に、次世代のハードコアを象徴するバンドなのだ。