Gone Wrong(ゴーン・ロング)
『Attention(アテンション) 』

バーモンド州出身のスケーター・ハードコア・バンドのEP。14歳から17歳までの若いメンバーで構成され他バンド。17歳以下のパンク/ハードコア・バンドといえば、イギリスのEater(イーター)やAgnostic Front (アグノスティック・フロント)のライヴで一曲だけボーカルを担った、のちのMadball(マッドボール)のボーカル、Freddy Cricien(フレディ・クリシュアン)を思い出す。

 

どちらのバンドも初々しくて、オリジナルティーは皆無だったが、Gone Wrong(ゴーン・ロング)もBlack Flag (ブラック・フラッグ)やChain of Strength(チェイン・オブ・ストレングス)をもろパクしたようなハードコア。録音状態も悪く、音がこもり、お世辞にもこのバンドにしかないオリジナルティーや高いクオリティーがある作品とはいえない。だがここで感じ取ることができるのは、なにがなんでも絶対に歌わなければいけないという衝動と使命感。

 

曲のタイトルも、“New Song(新曲)“や、“Phones(電話)”、“Scared To Fight(戦うのが怖い)”、“Just An Excuse(ただの言い訳)”など、自分が感じた気持ちを率直に歌詞にした内容。そこには深い人生考察は、ポリティカルな怒りなどまったく存在ない。歌詞に意味などない。発展途上の過程にある未成熟な歌声に、むしゃくしゃする気持ちのせ、ただノイジーでうるさい音に憧れ、抑えきれない衝動がある。自分の知らない未知の世界や大都会の流行への憧れ。大人と同じことをしたい欲求。そんなクソガキで特有のイノセントで生意気さが詰まった作品なのだ。

 

バーモンド州という大自然に囲まれた片田舎の小さな街。その環境で育まれた、打算やバンド戦略のない初期衝動もろだしのハードコアは、無色透明な純粋さを感じさせる。あとで恥ずかしく後悔するような無謀な若さ。個人的に好感の持てる作品だ。

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Dry Socket(ドライ・ソケット)
『 Shiver(シバー) 』

ポートランド出身の新世代のハードコアバンドによる2作目のEP。彼らのサウンドとは、ハイスピード&メロディックでユール・クルー色の強いTear it Up(ティア―・イット・アップ)とKill Your Idols(キル・ユア・アイドルズ)に、ハイテンションで駆け抜けるメロディック・ハードコアのPaint It Black(ペイント・イット・ブラック)を、ブレンドしたアングリーなハードコア。

 

女性ボーカル、Dani(ダニ)の怒りを超えた尋常でない金切り声が印象的なバンドで、おもに政治的な怒りやジェンダーフリー、男女平等について歌っている。今作ではトランプ大統領に対する、憎悪を超えたヒステリックなまでの怒りが目立つ。1曲目の“Damn You(ダム・ユー)”は、ずっと地獄にいろ!という意味のスラングで、<短剣のように脅かす口、軽率な発言をする>と歌い、4曲目の“Muzzle(マズル)”は、<思考がない。嘲笑に対する暴力的な嫌悪感。気分を害す。>など、女性を見下し人種差別をする、傲慢で軽率なトランプ大統領への憎しみが込められている。

 

地球温暖化を無視し大企業や富裕層を優遇するといった、政治的な失策よりも、傲慢さや差別主義に満ちたトランプ大統領自身の性格を批判した個人攻撃が目立つ。金切り声でヒステリックなまでに激情を叫ぶボーカルが、扇情的で警告音のようなギターと相克し合う尋常でない怒りと嫌悪感に満ちたハードコアなサウンド。尋常でない怒りをぶちまけたテンションの高さもすばらしいが、ハードコア界隈ではあまりいない独特なコードのギターもこのバンドの魅力の一つでもあるのだ。

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The Fight(ザ・ファイト)
『Endless Noise(エンドレス・ノイズ) 』

ニューヨークはロングアイランド出身のハードコア・バンドの、20年3月に発表された5枚目のEP。The Fight(ザ・ファイト)といえば、Chaos UK (カオスUK)ばりのノイズギターで重みのあるサウンドが特徴のバンドで、結成当時から一貫して、異端な存在感を放っている。

 

新世代のニューヨーク・ハードコアを象徴したバンドで、TRASH TALK (トラッシュ・トーク)以降のバンドに見られる、オールド・スクールをベースにした反骨心あふれる精神性を重視したハードコア・バンドだ。

 

The Fight(ザ・ファイト)は、UKハードコアをベースにしながらも、アラブのメロディーを取り入れ、押さえつけられた焦燥感に満ちたスピードと苛立ちに満ちた攻撃性で、スラム街に住む住人の怒りについて歌ってきた。

 

『終わりのないノイズ』と名付けられた今作では、権利や人権、財産を蹂躙する強者たちに対する怒りがテーマになっている。“The Clenched Fist of Human Greed(人間の欲への鉄拳制裁)”ではワーキングプアが増える裏側では、資本家たちがさらに富を増やしていると歌い、“Two on Every Corner(隅に2つ)”は、<警察国家、お前を打ち負かす、彼らはお前の命を奪うためにここにいる、彼らのバッジは憎しみを表している>と歌っている。まるでアトランタで起きた警察が黒人のレイシャード・ブルックスさんが射殺された事件を予見している内容だ。それほどほかの都市でもいつ起きてもおかしくなかった事件だったってことが証明できる内容なのだ。

 

勢いとスピードでぐいぐい押していくシンプルなハードコアだが、ここまで怒りという実直な想いがこもっているバンドもそうはないだろう。ポリティカルでリアリティーある怒りに満ちたハードコアな作品だ。

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