Woe (ウォエ)
『A Violent Dread EP (ア・バイオレント・ドレッド EP)』

フィラデルフィアのブラックメタルバンドの2作目のEP。正直、ぼくはこのジャンルに対して、深い知識はない。個人的なブラック・メタルの印象は、バイキングや悪魔のようなコスプレや、サタニズム、アンチ・キリストなどの精神性、音楽性よりも外見的なものを重視しているイメージがある。

 

彼らはブラック・メタルにカテゴライズされているが、そのサウンドからは、Neurosis(ニューロシス)やISIS(アイシス)などのポスト・メタルの影響を感じる。9分近く続くゆったりとしたリズムとノイズ・ギターの壁。そして不安と苛立ちと憤りが入り混じっているボーカルの怒声からは、まるでスロースピードで奈落の底へ落ちていくような深い絶望がある。アルバムジャケットのような世界観だが、その深淵に墜ちていく絶望には、まるでマゾスティックな快感がある。絶望と苦痛。苦痛が快感に変わるエクスタシー。それがこのバンドの魅力ではないだろうか。病んだ精神や現代病をうまく表現している。サタニズムとは違う魅力がある作品なのだ。

Vital Force(ヴァイタル・フォース)
『Fetus Of Mankind(フティス・オブ・マンカインド)』

ロシアはイジェフスクという工業都市を拠点に活動するストレーエッジバンドの2作目のEP。Raid(レイド)やAbnegation(アブネゲーション)など、ハードラインと呼ばれたストレーエッジの強硬派の思想と音楽から多大なる影響を受け、活動を始めたバンド。

 

ハードラインとは反薬物、反アルコール、反中絶、反性差別、反人種差別と、動物の権利などの思想を掲げ、肉や魚、卵や乳製品を含む動物性たんぱく質を摂取しないだけでなく、貧困国から搾取するチョコレートやコーヒーまで口にしない、節制に節制を重ねたストイックな思想なのだ。

 

Vital Force(ヴァイタル・フォース)の場合、環境保全や自然環境を守るといった活動に力を注いでいるバンドだ。歌詞には夕焼けやオーロラなど、大自然の美しさをモチーフにした内容が目立つ。

 

前作はRaid、Abnegationから多大な影響を感じるニュースクール系ハードコアにレベリューション・レコーズ系のスクリーモを加えたサウンドだったが、今作ではグラインドコアからメタル、サイケデリックなどを加え、音楽的は幅が広がった作品に仕上がった。とくにサイケデリックな要素を取り入れたことによって、大自然の美しさや安らぎ、厳しさとトランシーな恍惚感が加わっている。若干音の迫力が欠ける部分があるが、シリアスさは確実にサウンドに反映されている。確実に成長しているし、発売されるであろうフルアルバムが、期待させる作品だ。

Life Force(ライフ・フォース)
『MMXVIII Demo 』

オクラホマ州のノーマンと、テキサス州のダラスを拠点に持つストレーエッジ・バンドのデビューEP。Youth Of Today(ユース・オブ・トゥディ)からの影響が強く、もろにユース・クルーリバイバルといった内容。

 

だが舗装のされていないデコボコな砂利道をブルドーザーのように前へと進んでいく推進力と、熱くてパワフルな怒声ボーカルからは、華奢な印象が強かったユース・オブ・トゥデイと比べると、パワフルでマッチョで熱い。熱血漢なハードコアなのだ。

 

“WE STAND FIRM”(私たちは踏ん張る)や“I do not recognize their authority”( 私は彼らの権威を認めない)などの歌詞からは、政治的にも、ライフスタイルでも、曲がったことが大嫌いな姿勢がうかがえる。頑固なほどまっすぐで、正しいと思ったことを困難でも貫く熱さ。それが彼らの魅力なのだ。

Down To This(ダウン・トゥ・ディス)
The First Ten Years(ザ・ファースト・テン・イヤーズ)

今年の1月に発売されたノースカロライナ出身のニュースクール・ハードコア・バンドの200枚限定のコンプリート盤。09年に発売されたEP『Lifeblood(ライフブラッド)』から、11年の1stアルバム『Dirt City(ダート・シティ)』、14年に発売された2枚目のEP『Relentless(レレントレス)』の、いままで発売された3作品が収録されている。

彼らの特徴とは、オールド・スクールのシンプルなギターに、ニュー・スクールのストップ&ゴーなどのリズムやヒップホップな歌いまわしを合わせたサウンド。メタルからの影響があまり感じられない、骨太なハードコア・ギターサウンドが彼らの魅力だ。

サウンド全体からは、ギャングで不良の匂いがするニューヨーク・ハードコアからの影響が色濃く感じる。影響というよりもむしろニューヨーク・ハードコアを総まとめにしたような内容だ。スピーディーなサウンドからはAgnostic Front (アグノスティック・フロント)からの影響が伺えるし、ヒップホップな歌いまわしはMadball(マッドボール)、そして怒声のボーカルはSICK OF IT ALL(シック・オブ・イット・オール)とSheer Terror(シェラーテーラー)。ギターサウンドからはTERROR(テラー)からの影響を感じる。80年代から90年代、00年代と、3世代の特徴を網羅し、いいところだけを抽出し、ミックスしたサウンドなのだ。

初期のころから一貫してブレないクラシックなハードコアサウンド。そこには緊迫する日常のヒリヒリする空気が宿っている。

PROMISE BREAKER(プロミス・ブレイカー)
『Televiolence(テレヴァイオレンス)』

ペンシルベニア州出身のポスト・ハードコア・バンドの3作目。ペンシルベニア州といえば、近年CODE PRENGE(コード・オレンジ)やJESUS PIECE(ジーザス・ピース)などのエクスペリメンタルなハードコア・バンドを輩出し、独特な個性を持ったバンドが数多く存在する。PROMISE BREAKER(プロミス・ブレイカー)もまたコードオレンジやジーザスピース、ヴェインと同じく、ゆったりとしたスローテンポのリズムのダウナー系ノイズ・ハードコアに、グラインドコアやストナーロックやブルータル・メタルなどのアッパー系ハードコアが合体した、新タイプのハードコアを提示しているバンドなのだ。

 

自らをペンシルベニアNU VIOLENCEという呼び方をしている彼らのサウンドとは、テレビのチャンネルを高速で入れ替え、感情が目まぐるしく変わるようなパニック障害のような混乱した精神が特徴だ。そのサウンドはコードオレンジやジーザス・ピースからの影響を多大に感じる。だが邪悪な祈りをする魔界をイメージさせる暗黒ノイズドローンのコードオレンジや、葬式の厳かなムードが漂っているジーザス・ピースと比べると、もっと激しく躁病的でエネルギッシュ。狂ったほど病的で両者とはまた違った世界観を確立している。

 

デビュー作はデスコアや、KORN(コーン)のトラウマのようなおどろおどろしい音を、ジーザス・ピースのような激しいノイズ系のハードコアに取り入れた作品だった。ブラストビートなどの要素を取り入れ、さらにカオティックに深化した2作目。

 

そして今作では、100Wのテレビに200Wの電気を注入し爆発しているようなエナジーと暴力的な衝動が、さらに拍車がかかっている。ありあまっているフラストレーションを爆発させシンガロングするコーラスや、不安性な精神を紡ぐ警告音、デス声、地響きなど、あらゆるヴァイオレンスな音が集約され、アルバムの後半では不穏でありながらも静かで穏やかな曲が多く占められている。そして印象的なのが激しく駆け抜けたあとに20秒ほどの沈黙から始まる“Thing”。そこでは暗い部屋でテレビの明かりだけが灯り、企んでいるような不気味な感情を紡ぎだしている。今作では圧倒的に静謐の使い方がうまくなった。

 

ダウナー系ノイズ・ハードコアにヴァイオレンスな激しさを加えたサウンドスタイルを追求し、オリジナルティーを確立した。技術的にも円熟味を増し、彼らの最高傑作といえる内容だ。

Minimal (ミニマム)

ラスベガス出身のハードコア・バンドの5曲入りのデビューEP。サウンドはHave Heart(ハヴ・ハート)やLifetime(ライフタイム)あたりの影響を色濃く感じるハードコアの骨太のサウンドにメロディックを加えたサウンド。Bab Religon(バッドレリジョン)とはタイプが全く異なるスタイルのメロディック・ハードコアだ。

 

それにしてもその前向きなヴァイブに満ちあふれている。サウンド自体からはユースクルーからの影響は全くうかがえないが、歌詞の内容はGORILLA BISCUITS(ゴリラビツケッツ)の影響が色濃いがポジティヴ・ハードコアそのもの。“人は変わる”、“前進し続ける”、“私は振り返らない。過去にこだわらない”といった内容からは、恐怖や困難に立ち向かう姿勢や、過去の栄光を断ち切り前へに進んでいく強い意志を感じ取ることができる。

 

最小限と名付けられたバンド名からは、人生は多くのものを手に入れるのではなく、必要最小限のものがあれば、幸せな人生を送れるメッセージが込められているように思えた。フルアルバムが期待のできる有望な新人だ。

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