KIND(カインド)
『It’s Time To Heal(イッツ・タイム・トゥ・ヘル)』

ボストン出身のユースクルー・リバイバル・バンドの3枚目のEP。ユースクルー・リバイバルとは、スポーティーなファッションのストレートエッジ・シーンであるユースクルーの新世代のバンドのことを示す言葉だが、このバンドの場合、ユースクルー・リバイバルのさらに新世代のバンドといえるだろう。

 

いままでCHAIN OF STRENGTH(チェイン・オブ・ストレングス)からINSTEAD、Youth of Today(ユース・オブ・トゥデイ)などの、ユースクルー・バンドのみからの影響で、エネルギッシュでスピーディーな勢いのサウンドを展開していたバンドだが、今作ではかなり成長を遂げた作品に仕上がっている。

 

今作では、メロディックなギターフレーズやイントロが加わり、ドスの効いた歌声とスピーディに駆け抜けていく勢いあるサウンドに、味わい深さが増した。まるで苦難を乗り越え落ち着きを獲得した人間的変化と個人的な成長を反映させたサウンドなのだ。

 

歌詞は“break away(離脱する)”では、<俺の希望と夢をはく奪された。だが俺は自分の人生と希望を見失うことはない>と歌い、“Meant To Be~(になるはずだ)”では<私を見捨てた世界。私の壊れた部分。~人生に ふさわしい、私の真の魂を示すために >と、絶望から這い上がるような内容が多い。

 

愛と平等と幸福のメッセージを広めるというポリシーを掲げ活動している。さらなる成長を遂げ、これからの活動の飛躍できるバンドなのだ。

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GOD’S HATE(ゴッズ・ヘイト)

新日本プロレスでも活躍する人気プロレスラーのBrody King(ブロディ―・キング)がボーカルを担当し、TERROR(テラー)やTWITCHING TONGUES(トゥウィッチング・タングス)のメンバーで構成されたGOD’S HATE(ゴッズ・ヘイト)の5年ぶりとなる2作目。

 

アメリカではメタリック・ハードコアというジャンルで呼ばれている彼らだが、そのサウンドはメタルバンドのMastodon(マストドン)や、90年代のメタリックなニューヨーク・ハードコアのAll Out War(オール・アウト・ウォー)やHATEBREED(ヘイトブリード)からの影響を色濃く感じさせる骨太なハードコア。

 

GOD’S HATE(神を憎む)というバンド名が示す通り、歌詞は憎しみについての内容が多く、破滅的な世界観を追求している。“Finish The Job(仕事を終える)”では<平和主義は癌>だと歌い、“God’s Hate(神の憎しみ)”では、<憎むべき献身と神への信仰~人類に対する神の憎しみ>と歌っている。“Eternity Of Hate(永遠の憎しみ)”では<戦争を行うため遺伝的に考案された>と、人間の性(さが)と業について言及し、“The Valley Beyond (818)(向こうの谷(818))”では<聖人の谷、神の憎しみの震源地>と、憎しみの根源が谷にあると、まるでツインピークスのような悪の形を表現している。

 

歌詞は不信感と憎しみについて歌っているが、サウンド自体からは怒りや憎しみの感情を感じ取ることはできない。むしろ教訓めいた教条的な雰囲気が漂っている。そこにあるのは破壊と殺戮というカタルシスに酔うダークで甘美な世界。ハードコアの“躁”のうるささと激しさを感じない落ち着いたサウンドで、Brody King(ブロディ―・キング)のハスキーで艶やかな歌声に、クラシックミュージックのようなコーラス、映画の一幕を切り取ったイントロと破滅と絶望をザクザク刻む重いギターのリフからは、まるでエロティックなほど艶やかで、予見していた運命を受け入れるような破滅願望を感じさせるのだ。

 

死神をモチーフにしたTWITCHING TONGUES(トゥウィッチング・タングス)と、戦争という殺戮による神を憎む死のGOD’S HATE(ゴッズ・ヘイト)。死をモチーフにしている部分では、お互いに共通している。憎しみの根源は神にあると表現したGOD’S HATE(ゴッズ・ヘイト)は、悪こそが正義という逆説的な意味が込められている。まるで興奮の渦に引き込むようなヒール(悪役)のプロレスラーの劇場がそこにはあるのだ。

Zulu(ズール)
『My People​.​.​. Hold On(マイ・ピープル…ホールド・オン)』

ロサンゼルス出身のパワーバイオレンス・バンドの2作目のEP。Bad Brains(バッド・ブレインズ)やCerebral Ballzy(セレブラル・ボールジー)、Trash talk (トラッシュ・トーク)などのバンドに続く、黒人ハードコア・バンド。

 

だが上記に挙げたバンドたちのすべてがニューヨーク出身(Bad Brains(バッド・レリジョン)はDC出身だがニューヨークで活躍)だが、Zulu(ズール)は西海岸出身のバンドだ。上記で挙げたバンドたちからの影響はあまりなく、パワーバイオレンスにメタルの重いリフと雪崩のようなブラストビートを合わせたサウンドで、つんざくようなノイズギターと甲高いシャウトと重くドスの効いた怒声のシンガロングするボーカルが特徴のバンドだ。

 

歌詞は、黒人社会の現状、アンデンティティ、レイシストへの抵抗など、虐げられたアフリカ系・アメリカンの現状を歌った社会派のバンドだ。ただ白人社会への怨嗟、人種差別への怒りなどを怒りや憎悪の感情は感じられない。このバンドの魅力は、神に感謝や、正しい行為をするなど、まるでマルコムXのような、アフリカ系アメリカンの誇りと戦う姿勢と道徳観にある。

 

レゲェ―やジャズなど偉大な黒人ミュージシャンたちのサンプリングを切り貼り、黒人カルチャーの素晴らしさを伝えている。その一方で黒人社会の悲惨でシリアスな現状を伝える演説のような声のコラージュがあり、心に痛みがダイレクトに伝わってくる部分がある。

 

黒人カルチャーへの偉大な経緯と誇りを掲げながら、プラックピープル、ブラックカルチャー、ブラックパワー、解放、自由などをモットーに挙げ、活動している。憎悪のみの感情に走らないところがすばらしいし、まさに黒人の偉大さを感じる作品なのだ。

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