SECT(セクト)
『Blood of the Beasts (ブラッド・オブ・ザ・ビーストズ )』

ニューヨーク出身のヴィーガン・ストレートエッジ・バンドの3作目。Trash Talk (トラッシュトーク)やNALIS(ネイルズ)と同様に、バリバリ響くノイズギターを中心とした、最先端のハードコア・サウンドを展開している。今作でもそのサウンド路線に変わりはない。前作よりも、さらに過激に、よりスピーディーに、よりノイジーに、より重いサウンドに、深化している。

 

今作のアルバムタイトルは、フランスで1949年に上映された、ジョルジュ・フランジュ監督の食肉処理場ドキュメンタリー映画、『獣の血(英語読みでブラッド・オブ・ザ・ビーストズ)』から採用。残酷な内容の映画で、首を刎ねられた牛や羊がピクピク動き、皮を剥ぎ、肉を切るシーンは、食肉加工のおぞましい現場をリアルに生々しく伝えている。

 

今作では映画の屠殺の残酷さを、サウンドで忠実に再現することがコンセプトになっている。歌詞には“屠殺場で皮膚のしわから蒸気が上がる”などのリアリティーのある言葉が目立ち、機械のように無感情で淡々と動物を殺していく屠殺場の残酷さをイメージさせる。

 

その臨場感のあるサウンドからは、まるで業火に焼かれているような苦しみや、断末魔の叫びのような絶望を感じることができる。圧迫するような恐怖がひしひしと伝わってくるのだ。

 

アニマルライツ(動物の権利)だけでなく、そのほかにもメキシコ国境の壁についての人種差別への抗議や、ドラッグで崩壊した家庭などについても歌っている。総じて伝えたい内容は、動物の虐待や差別主義者の独裁者の台頭に、無自覚でいる庶民への警鐘なのだ。

 

今作でもプロテストソングの高いモチベーションを保ち、ヴィーガン・ストレート・エッジという信念を貫いた、熱い作品なのだ。

CEREMONY(セレモニー)
『In the Spirit World Now(イン・ザ・スピリット・ワールド・ナウ)』

カルフォルニア出身のハードコア・バンドの、じつに4年ぶりとなる6作目。Ceremony(セレモニー)といえば、アルバムを発表するたびに異なるジャンルのサウンドに挑戦してきたバンドだ。デビュー作の『バイオレンス×2』はパワーバイオレンスよりのハードコアを展開し、3作目のRohnert Parkでは、初期Pil(パブリック・イメージ・リミテッド)などのポストパンクなサウンドを展開。そして12年の『Zoo』ではセルアウトした感じがあったガレージロックのようなサウンドに変貌していた。そして15年の『The L-Shaped Man』ではThe Cure(キュアー)からの影響が強く、激しさのまったくないニューウェーヴの揺らめくような孤独と暗いサウンドを展開していた。アルバムを発表するごとに激しさは薄れ、ポップになっていく印象を受けた。

 

そして今作ではニューウェーヴ度がさらに進み、Depeche Mode(デペッシュモード)のようなシンセポップを展開。規則正しいリズムで無機質に響くキーボードの音に、暗闇で妖しく光るニューウェーヴ特有の孤独と耽美性。そこにはロック特有の激しさはなく、終始穏やかで陰鬱な世界観がある。

 

アルバムのテーマは自由意志と欲望。際限なき欲望のために自己破壊的になる可能性について述べている。具体的に説明するなら、ドラッグやアルコールで身を滅ぼした人について歌っている。

 

同じ作品を作らないという強い意志や、自己制御的なストイックさという強い信念は、このバンドの最大の魅力だろう。だが物事をシリアスに捉えすぎて、バンドが袋小路に追い込まれ迷走悩んでいるようにも思えた。個人的には初期のころの荒々しさのほうが好きだったが、技術的な部分の人間性の成長を確実に感じさせる作品でもある。それがこの作品のよさだろう。

156/Silence(156/サイレンス)
『Undercover Scumbag(アンダーカバー・スカムバック)』

ペンシルベニアはピッツバーグ出身のデビュー作。このバンドも新世代のポスト・カオティック・ハードコアなサウンドを展開するバンドひとつ。

 

ハードコアをノイジーなギターに暗黒ドローンに進化さたCODE ORANGE(コード・オレンジ)、強く激しいサウンドの後に不気味なストナーな酩酊感が襲うJesus Piece (ジーザス・ピース)、プログラミングエラーのような高速打ち込みドラムを加えたVein(ヴェイン)と比べると、それほど目立った個性はない。

 

このバンドの特徴はニュースクール系のスローテンポな野太いノイズギターを中心に、トリッキーで七色のように変化する技巧的なギターと、嘆き叫び系のボーカルが絡み合うサウンドだ。

 

“Fake It”では神経質でトリッキーなギターが反響し、“Saving, Saved”では、高まる絶望と嘆きの叫びをギターのメロディーがさらに暗く絶望的な気分にさせる。“Wasted Potential”では警告音のようなギターがなり響き、“Face Value”は絶望の底で静かにたゆたうメロディーが印象的。いろいろな方向性を表現できるテクニカルなギターが、このバンドの魅力なのだ。

 

絶望と嘆き憤りなど感情が支配しダウナー系のバンドだが、曲々に光輝くセンスを感じさせる部分がある。まだEPだが、大きく飛躍する可能性を秘めているバンドなのだ。