BURN(バーン)
『​From the Ashes (フロム・ザ・アッシュズ)』

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89年から活動を続けるニューヨーク・ハードコア・バンドの、じつに14年ぶりとなる4作目のEP。

 

今作を含め過去4作は、4曲入りのEPが3枚、6曲入りのアルバムが1枚と、活動期間のわりには持ち歌の数が極端に少ないバンドだが、それだけ曲にこだわりをもっている。気に入らない箇所は修正され手直しを加え、試行錯誤を繰り返しながら、選ばれた曲たちなのだ。まるで日本酒の大吟醸の米のように、極限まで研ぎ澄まされ、吟味されている。だからハードコア・バンドにありがちな、どれも同じ曲に聞こえるような駄作と呼ばれる曲はそこには1曲も存在しない。

 

彼らのいままでの作品の変遷を説明すると、ゴリラビツケッツやシック・オブ・イット・オールなどのユース・クルー・シーンを集約したサウンドを展開したデビューEP。スピードよりもスローテンポのグルーヴを重視した曲に、ファンクやヒップ・ホップ、オレンジ9㎜やレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの要素を加えた、同時の最先端をいったニュースクール・ハードコア。そして今作では、また違った別のアプローチを展開している。

 

そのサウンドは次世代のハードコアと呼べるオリジナルなハードコア。1曲目の“Novelist”はまるでミクスチャーロックのように複雑に入り組んだ展開のテクニカルなギターが魅力な曲。2曲目の“You Can’t Stop Me”は2ビートでハイテンポのオールドスクールなハードコア。3曲目の“We Don’t Stand A Chance”はジーザス・リザードから発展したポストコアにサイケデリックなギターを合わせた展開。

 

歌声はボーカルそのものが代わったのかと思わせるぐらい甲高く危機感を煽るような声に変化し、それぞれにジャンルが異なる方向性の曲で、過去の面影を感じないくらい変化をしている。だがどの曲もハードコアのスピリッツにあふれている。なにより全作品で共通する、薄汚れた路地裏の地下道で、銃口を向けたギャングたちに絡まれるような、危なさを感じる緊迫したニューヨーク・ハードコアの独特な雰囲気は失われていない。今作も3曲と少ないがそれぞれに魅力の詰まった作品だ。