Circa Survive(サーカ・サヴァイブ)
『On Letting Go(オン・レッティング・ゴー)』

On Letting Go (Ocrd)On Letting Go (Ocrd)
Circa Survive

Equal Vision Records 2007-06-03
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07年に発売された2作目。彼らの存在を一躍有名にしたのはこの作品。前作の孤独と寂寥に満ちた世界観こそ変わらないが、ポスト・コアやマーズ・ヴォルタを含めたプログレからの影響は薄くなった。代わりにDredgのような爆音ギターを前面に押し出している。

今作ではさらに内面世界を思索している。ここで歌われている内容は、理性と感情の葛藤や、失われた匂いや感情や感覚、時間の浪費や喪失などについて。総じて俯瞰しているし、ふあふあしていてシュールだ。たとえば“ユア・フレンズ・アー・コーン”では<あなたが隠すために安全な場所だと思った心のなかが~すべての友人を失った原因>と歌っている。それが後悔なのか、よい結末だったのか、教訓的でもあり、どっちともとれる曖昧な内容だ。前作はギリシア神話で、今作では新訳聖書の物語を示唆するような内容だという。“マンダラ”という仏教的なタイトルの曲もあるし、それが本当なのか詳しいことは、よくわからないが、独特の世界観を持っていることはたしかだ。

歌詞が与えている影響に関していえば、ぼくの英語力が未熟で、すべてを理解できない。でもこの作品に関していえば、最大の魅力はメロディーだ。しかも独特な美しさがある。爆音ノイズギターと繊細で甘美なメロディー。淡い炎によって周りの空気が揺らめくようなサイケデリック・サウンド。そしていまにも壊れそうな繊細で脆い美声のボーカル。その声は軽やかで優しくも憂鬱で暗さを感じる。そのボーカルがメロディーの中心を担い、マイ・ブラッティー・ヴァレンタインや、DREDっぽさGを回避している理由であり、彼ら独特の陰鬱なインテリジェンスを持った特異な美的な世界観を形成している要因だ。

なによりアドバルーンに人間の頭が燃えているアルバムジャケットもカッコいいし、サウンド、ボーカル、すべてにおいて美しい。その美しさが病みつきになる作品だ。