Dag Nasty(ダグ・ナスティー)
『Dag With Shawn(ダグ・ウィズ・ショーン)』

Dag With Shawn Dag With Shawn
Dag Nasty

Dischord 2010-10-18
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バッド・レリジョンやハスカー・ドゥと並び、メロディックハードコアの創始者のひとつとして知られるDAG NASTY(ダグナスティー)。7セコンズやH2Oなどの東海岸のメロディック・ハードコア・バンドに多大な影響を与えたことでも有名だ。ダグ・ナスティーのデビュー作『CAN I SAY(キャン・アイ・セイ)』以前に収録された、初代ボーカリスト”SHAWN BROWN(ショーン・ブラウン)”在籍していた1985年のハロウィンの日にレコーディングされた『DAG WITH SHAWN(ダグ・ウィズ・ショーン)』が、2010年に25年の時を経てリリースされた。

 

現バッド・レリジョンのギタリストであり、元マイナー・スレットのベース/ギターであるブライアン・ベイカーがダグ・ナスティーを始めた経緯は、マイナースレットというバンド活動で、自分の個性を発揮しきれず、忸怩たる気持ちを抱えていたところにある。マイナー・スレットではベースを担当し、後期こそギターに代わったが、自分の演りたいことや、個性を発揮しきれなかった。そんなモヤモヤを抱えていたブライアンが、自分のやりたい音楽や、ギタースタイルを確立するため始めたバンドがダグ・ナスティーなのだ。

 

当時ダグ・ナスティーが画期的なサウンドを展開しているバンドとして語られた理由は、ハードコアの2コードの部分にメロディーを導入したところにある。ハードコアのスピードにメロディーギターとボーカルを合わせたバッド・レリジョンやハードコアの分厚いギターにメロディーを取り入れたハスカードゥとは異なるアプローチのメロディック・ハードコアだったのだ。

 

とくにデビュー作『キャン・アイ・セイ』は、デイヴ・スマイリーの熱く爽やかなメロディーを帯びたボーカルがブラインのギタースタイルに合わさり、正々堂々と人生に立ち向かっていくような、エネルギッシュで熱く健やかな作品だった。ハードコアのなかでも希望に満ちあふれた作品で、独特な個性を放っていた。

 

改めて再発された『ダグ・ウィズ・ショーン』だが、デモ作品をリリースした作品だけあって、『キャント・アイ・セイ』にすべて収録されている曲だ。この作品のほうが粗さがあるものの、サウンド自体はそんなに変わりはない。個人的にはデイヴ・スマイリーのボーカル・スタイルが好きで、ダグナスティーの最高傑作は『キャン・アイ・セイ』だと思う。その気持ちは今も変わらない。そのなかで『ダグ・ウィズ・ショーン』のよさを挙げるなら、デイヴ・スマイリーとは異なる魅力があるショーンの歌声だろう。ショーン・ブラウンのボーカルは、デイヴとは違い、もっとハードコア寄りのスタイルだ。怒声で挑発的で矢継ぎ早に捲し立てる歌声からはハードコアそのものの熱気と闘争心を感じる。デイヴとは違い、希望に向かってキラキラと輝く爽やかさは皆無だ。未開の荒れた土地をブルドーザーのようにパワフルにグイグイ進んでいく、汗臭いほどの熱気と男臭さにあふれた歌声がショーンの魅力なのだろう。

 

この作品が『キャン・アイ・セイ』の代わりに発表されていたら、このバンドの評価はもっと違うものになっていたのかもしれない。ボーカルの違いでアルバムの質感が変わることを、改めて再認識させられた作品だ。