face to face(フェイス・トゥ・フェイス)
『Protection(プロテクション)』

ProtectionProtection
Face To Face

Fatwr 2016-03-10
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デビュー作を発表したレーベルであるファット・レック・コーズに戻り、発表された3年ぶりとなる8作目。フェイス・トゥ・フェイスの活動25周年を記念した発表された作品だが、2011年以降の、再結成されてから発表された作品のなかでは、一番の出来ではないか。いや、むしろ全盛期である3rd『フェイス・トゥ・フェイス』に匹敵する作品だ。90年代後半の、僕が好きだったころのフェイス・トゥ・フェイスが戻ってきた。

 

その戻ってきたものとは、窓を全開に開た車で全速力で駆け抜けていくような爽やかで心地よい開放感に満ちた疾走感。渋いコントラストのあるベース、カーテンから光が差し込むようなメロディーライン。カルフォルニアの空気のようなカラッ明るいメロディック・サウンド。それらは目をつぶっいても一発でフェイス・トゥ・フェイスのサウンドだとわかる、彼らならではの独特な音なのだ。

 

そのメロディーラインと疾走感は、2ndアルバム『ビック・チョイス』を彷彿とさせる。今作では『ビック・チョイス』の続編のような仕上がりだ。とはいっても、『ビック・チョイス』にあった泣きじゃくるような切なさや感傷などのセンチメンタリズムは、一切ない。あるのは、どんな困難がこの先あろうが前へ進んでいく固い決意と開き直り。アルバム全体に爽やかな風のような男らしさが漂っている。

 

元来彼らは似通った作品を作ることに、極端なほど抵抗をみせたバンドでもあった。前作とは違ったサウンドの作品を作るという意識が、ファン離れを起こし、悪い方向に向かうこともあった。自分たちの演りたいサウンドとファンが望むサウンドの狭間で乖離を生みだしていた。

 

歳をとって丸くなったせいなのか、ファンが望むんでいるものに対して、その期待に応えてやろうとする意識とモチベーションが、今作では強く感じる。今まで封印していたメロディーと疾走感を、今作で復活させたのは、ファンを喜ばせようとする意識からだろう。その喜ばせようとする意識が、アルバムに熱意と衝動をあたえ、全体に爽やかな風を感じる素晴らしい作品に仕上がっている。ここにきて初めてコール&レスポンスという、ファンの期待に応えたのだ。

 

たしかに彼らの魅力の一つであったセンチメンタリズムはなくなっている。だがもやはそんなものはぼく自身彼らに求めていない。むしろセンチメンタリズムから固い決意と開き直りに変わったことによって、40代の心境を如実に表しているのではないか。大方の人が挫折や悲しみの先にある感情を経験した年代で、もはや悲哀だけにくれるほど、同じ場所にとどまっているわけでもないのだ。そんなリアルな気持ちを反映したアルバムでもあるのだ。

 

個人的には今年に入りノー・ファン・アット・オールなど、96年のメロコアリバイバルを経験し、ひさびさに20年前の熱い気持ちや衝動、なにより性急なパンク・サウンドにシビれた あのころのフィーリングがよみがえってきた。この作品もそんな意識を強く感じる作品の一つだ。個人的には今年のベスト5に確実に入ってくる作品だ。