Fucked Up (ファックド・アップ)
『Chemistry of Common Life (ケミストリー・オブ・コモン・ライフ)』

Chemistry of Common LifeChemistry of Common Life
Fucked Up

Matador Records 2008-10-20
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大手インディーレーベル、マタドールに移籍し08年に発表された2作目。彼らの最高傑作と名高い作品。前作よりも格段に成長を遂げている。実際、NME、ニューヨーク•タイムズ、ミキサー、ピッチフォーク、オルタナティブプレスなどの雑誌や多くのような出版物から、多大な称賛を受けた。たとえるなら今作はレットライヴ同様、ハードコアからポスト・ハードコアへ進化させ、ハードコアを新世代のネクストレベルに上げた作品だ。

 

だが同じハードコアをベースにしながらもアフロビートやサルサのマラカスのリズムなど南米音楽などをハードコアにぶち込んだレッドライヴとは、180度異なる音楽性を展開している。ファックド・アップの進化とはプログレ的な長めの曲をベースにシューゲイザー、フルート、オルガン、ホルンなどの楽器をハードコアにぶち込んだところ。基本的には前作同様、ネガティヴ・アプローチからの色濃い影響を感じるボーカルや、4分を超える長めの曲をベースにしている。そこにインダストリアルや上記の楽器を加えることによって、前作よりもさらにヴィヴィットに仕上がっている。ジャンルやフレーズを取り入れるというよりも、新しい音をサウンドフォーマットに加えているのだ。

 

たとえば“ゴールデン・シール”では、日の出にたそがれるようなシュケイザーが中心のインストメンタルな曲で、いままでにない新しい曲で、“ノー・エピファニー”では、パワフルなハードコアに音程の外れたムーヴシンセを加えることによって、シリアスさを和らげている。実験的ながらも新しいことにチャレンジしているのだ。個人的に一番好きな曲は“サン・ザ・ファザー”。ここでは甲高い叫び声のボーカルを入れることによって、テンションが尋常でなく高まり闘争心をさらに煽っている。気持ちが高ぶる高揚感が最高だ。

 

そしてアティテュードもマイノリティーという虐げられた弱者の悲しみや怒りが漂っているレットライブとは違い、ファックド・アップは、もっとパワフルでストロングだ。今作のテーマはドラッグと宗教の共通項と、人類誕生のなぞや、生命の誕生と死(および再生活)の起源について、知的で難解な内容をテーマにしている。“デイズ・オブ・ラスト”と“ノー・エピファニー”と“トゥワイス・ボーン”では、ドラッグと宗教の両者が共通するのは、心の癒しと安らぎだと語り、天の啓示や逃げ道にすがる行為を否定し、問題は自分の力で解決しろと言っている。人生とは弱い自分との戦いなのだと、DIY精神を説いている。

 

また07年にはMTVカナダに出演した際には、ライブがエキサイトして器物破損という事故を起こした。ライブでは流血がざらと、まさにブラック・ブラッグばりの暴力的なライブパフォーマンスを展開している。知性と野獣という二律背反的な要素が同居しているのも、また彼らの魅力のひとつだ。