Fucked Up (ファックド・アップ)
『Singles Collection (シングル・コレクション)』

イギリス、ドイツ、ギリシャ、日本の4ヶ国で限定で発売され、現在、入手困難となっている8枚のEPをコンパイルし、09年に発売されたシングル集。このシングル集はたとえるならクラッシュの『シングルズ』やジーザス&メリーチェインの『21シングルズ』に匹敵する作品といえるだろう。その理由は、アルバムでは選考からもれた優れた曲が収録されているから。むしろアルバムより、このシングル集のほうが個人的には好きだ。そこにはアルバムでは伝えきれていない、ファックド・アップの魅力がすべて詰まっている。

 

このシングル集に収録されている曲を説明すると、1と2は、02年7月22日に発売された『POLICE』。3と4は05年5月6日に発売された『BAITING THE PUBLIC』。5と6は02年1月26日に発売された『NO PASARAN』。7と8は03年8月9日に発売された『DANCE OF DEATH』。9から12は04年7月24日発売の『LITANY』。13~15は05年12月28日発売の『GENERATION』。16は『DANGEROUSFUMES』。17と18と19は06年2月5日発売の『TRIUMPH OF LIFE』。計8 枚のシングルが収録されている。

 

いままで発表した2枚のアルバムは、ほとんどの曲が6分台で、展開が変わるのが彼らの特徴だった。だが、ここに収録されているのは(1曲を除いて)ほとんどが2分台のファストなハードコア。終始勢いよく、簡潔でノンストップに駆け抜けていく。相変わらずプルパワーで駆け抜けていく勢いと、ネガティヴ・アプローチの影響が濃い熱く気合の入ったボーカルを中心としたエナジフルなサウンドに変わりはない。だが曲が2分台のため、そこにスパッと簡潔で直截的な決断の速さ、終始、挑発し続けるような過激さが加わっている。

 

とくに印象に残ったのは10曲目の“ワット・コールド・ハヴ・ビーン”と11曲目の“カラー・リムーバル”と13曲目の“ジェネレーション”。10は挑発し怒りを煽るような扇情的なギターのメロディーが印象的で、11はNOFXからの影響を感じる性急なベース・ラインが魅力な曲。13は、アラブのお祈りのようなコーラスをハードコアに取り入れ独特なサウンドを展開している。ほかにもサンディエゴシーンのようなガレージをベースにした1曲目のようなハードコア曲もある。彼らの個性である練れたギターアレンジや、いろんなハードコアを聞き込み、サウンドに取り入れている彼らの個性は失われていない。

 

個人的にこの作品が一番好きな理由は、ハードコアな作品だからだ。ここには6分台という長い曲に、いろいろなアレンジや展開を持ち込んだ変形した形のポスト・ハードコアのような変化球はない。すべてが直球勝負のハードコアで、シンプルで簡潔で直截的。パワフルで息つく暇もなく矢継ぎ早に繰り出されるハードコアは、聴くものに元気や勇気や活力をあたえてくれる。その姿勢がすばらしい。やはり彼らの魅力はハードコアにあるのだ。