Fugazi (フガジ)
『First Demo (ファースト・デモ)』

First DemoFirst Demo
Fugazi

Dischord 2014-11-16
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ポスト・ハードコアを代表するバンドで知られるフガジの14年に発表されたデモ集。88年にフガジを結成してインナイヤースタジオにて収録された初めてのデモ音源で、その内容は後の2枚のEPを合わせたデビュー作の『13ソングス』に収録された曲が3曲、2ndアルバム『リピーター』から4曲、01年に発表されたEP『ファニチャー』から1曲、89年にフガジが参加したコンピレーションアルバム『ステイト・オブ・ザ・ユニオン』から“イン・ディフェンス・オブ・ヒューマンズ”、02年にディスコード・レーベル創設20周年を記念して発売されたボックス・セットから“ザ・ワールド”、96年に来日したフガジのライブ音源でのちに1000枚日本限定で発売された『10/30/96 SAPPORO JAPAN COUNTERACTION』から“ターン・オフ・ユア・ガンズ”のデモ・ヴァージョンが計11曲が収録されている。

 

あくまでもデモだけあって、全体的にラフな仕上がりだ。だからこの作品の最大の価値は、“イン・ディフェンス・オブ・ヒューマンズ”や“ザ・ワールド”などのレアトラックと、いままで日本限定のライヴCD、もしくはダウンロード音源でしか聴くことのできなかった“ターン・オフ・ユア・ガンズ”のレコーディング音源にあるだろう。だが細部まで目を配らせると、この作品の魅力はほか曲にもある。たとえば“ウェイティング・ルーム”では、ラフな感情で作られていて、今作ではあくまでもベースが中心に作られている。それが『13ソングス』では、ボーカルが奥に引っ込み、ギターアレンジが肉付けがされて、曲の深みが増している。そして何より面白いのは、フガジを結成して一番最初に収録されたデモなのに、作品としては一番最後の年に発表された“ファニチャー”だろう。約13年間寝かせ発表された曲だが、フガジは似通った作品を作らないバンドだし、アルバムを重ねるごとに、新しいエッセンスが加わえ、技術的に確実に進化をしている。だがここでは初期のギターのフレーズがループするよさを残しつつも、突如激しくなるパートの部分が洗練されたギターサウンドを肉付けした形に仕上がっている。初期の荒削りなよさと後期の技巧がうまいこと混ざり合っているのだ。

 

上記のような初期と最終期がまざった珍しい曲もあるが、デモだけあってやはり全体的に完成度は低い。だがここではバンドを結成した当初の生々しい感情が詰まっている。とくにトリッキーで変則的なリズムと、力強く爪弾くギターアレンジには、どこにもないオリジナルなサウンドを作ってやろうとする気迫を感じ取ることができる。青春時代を真空パックに閉じ込めたような青々しいころの彼らが見える作品なのだ。