Pele(ペレ)
『Elephant(エレファント)』

ElephantElephant
Pele

Sign Language 2001-01-28
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ミルウォーキー出身のインストメンタル・バンドの99年に発表された3作目。そこに02年の来日ライヴ音源を、3曲加えたリメイク盤。03年にポリビニール・レコーズから発売。ポリビニール・レコーズといえば、日本ではブレイドなどのエモバンドが所属しているレーベルとして知られている。しかしアメリカから見れば、実験的で一癖あるバンドが集まった、インディーロック・レーベルとして認知されている。だから彼らはけっしてエモバンドではない。元プロミス・リングのメンバーが在籍していたこともあって、エモバンドとして語られがちだが、彼らとの特徴をあえて挙げるなら、アメリカ中部特有の、どこまでも麦畑の水平線が広がる広大な大地をイメージさせる、おおらかさと水しぶきがキラキラ光るイノセントあふれるバンドサウンド。そんなルーズで牧歌的で広大なサウンドが中部のバンドたちの特徴といえるだろう。

 

その彼らが奏でるインストメンタル・サウンドといえば、ジャズやカントリーからの影響が強い。しかしジャズのような都会的な洗練されたピアノやホーンや優雅な上品さはない。あるのはギターとベースとドラムを中心としたバンドサウンドだ。彼らはインディーロックからポストロックに発展したバンドだが、エモーショナルな部分はまったくない。穏やかで控えめな情熱に満ちている。感情を削ぎ落とし無機質なポストロックと比べると、ウェットで情緒的だ。

 

穏やかに優しく爪弾くギターからは、まるで初夏の若葉がはえる木陰で、休憩しているような爽やかさのような清々しさをイメージさせる。透明感あるメロディーと穏やかに躍動感が増していくドラムのセッションからは、若葉が芽吹くような静かな情熱と、控えめでありながらも生命の力強さを感じさせる。徹底的したアレンジへのこだわりや、大自然をフィーチャーしたサウンドが、彼らの特徴といえるだろう。

 

彼らは、マスロックの先駆者的存在でもあり、日本のバンド、teやtoeにあたえた影響も計り知れない。そういった意味で彼らはインディー・ポストロックの先駆者であるのだ。清涼感ある癒しや、穏やかな安らぎがほしい人にお勧めの作品だ。