The Gaslight Anthem (ザ・ガスライト・アンセム)
『THE B-SIDES (ザ・Bサイドズ)』

The BThe B
Gaslight Anthem

Side One Dummy 2014-01-27
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14年1月に発表されたシングルのB面を集めたアウト・テイク集。B面の曲ということだけあって、当然、アルバムのように一貫した流れや、そのときの心情やエモーショナルを閉じ込めた曲は少ない。どちらかといえば本気というよりも、遊びや実験の要素が強い、肩の力を抜いたラフな内容だ。彼らのことが好きな人だけが買うマニア向けの作品といえるだろう。

 

曲を説明すると、①はアルバム『アメリカン・スラング』のアイ・チューンズ専用のボーナス・トラック。②はシングル“オールド・ホワイト・リンカーン”のB面に収録された曲。③はシングル“59サウンド”のB面の曲でパールジャムのカヴァー。④はシングル“ステイ・ラッキー”のB面の曲で、ローリング・ストーンズのカヴァー。⑤はシングル“ザ・スピリット・オブ・ジャズ”のB面の曲でアコースティック・ヴァージョン。⑥はレーベルメイトでフロリダのインディー・ロック・バンド、フェイク・プロブレムスのカヴァーであり、同バンドと11年に発表されたスプリットに収録されていた曲。⑦はシングル“グレート・エクステイション”のB面の曲で、同曲のアコースティック・ヴァージョン。⑧はアルバム『アメリカン・スラング』のオーストラリア・エディションのボーナストラックで、カナダのエレクトロ・インディー・ロック・バンド、ライトニング・ダストのカヴァー。⑨はシングル“アメリカン・スラング”のB面に収録されていた曲で、同曲のアコースティック・ヴァージョン。⑩はシングル“ボクサー”のB面の曲で、同曲のアコースティック・ヴァージョン。⑪はアルバム『ザ・59・サウンド』のアイ・チューンズ専用のボーナストラックで、アメリカのソウル&ブルース・バンド、ロバート・ブラッドリーズ・ブラックウォーター・サプライズのカヴァー。

 

総じてアコースティックの曲が多く、遊び感覚で曲を収録しているのは理解できるが、B面といっても捨て曲はない。むしろルーツがむき出しになっている。あらためてじっくりと聴いてみると、ボーカルの歌い方はブルース・スプリングティーンにそっくりだ。まるでブルース・スプリングティーンのアルバム『ネブラスカ』みたいな感触を受ける。そこから受ける感想は、寒さ凍える労働者のような悲惨さがある。いままで労働者階級であることを誇りに、ブルースやR&B、クラッシュ系のパンクをベースにしたサウンドを展開していたパンク・バンドはたくさんいた。だが彼らと決定的に違うのは、富裕層や理不尽な政治と戦っていく闘争心にある。ガスライト・アンセムの場合、富を搾取する金持ちたちの怒りより、なぜ自分たちは不況な境遇にあるのは、疑問に思っている。自分たちが生きていくことに精一杯で、怒りや憎しみを抱き、嫉妬する余裕すらない。そこに彼らの不器用な純朴な人柄が伝わってくる。ネイキッドな感情がむき出しなのは、この作品くらいだろう。そういった意味では価値のある作品だ。