THE GET UP KIDS(ザ・ゲット・アップ・キッズ )
『There Are Rules(ゼア・アー・ルールズ)』

ゼア・アー・ルールズゼア・アー・ルールズ
ザ・ゲット・アップ・キッズ

QUALITY HILL RECORDS 2011-01-15
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11年に発表された5作目。前作同様、ポップソングが一曲もない。あるのはゴズの要素が加わったサイケデリック。昨年発売されたEPよりも、ヘヴィーに仕上がっている。今作では、徹底的にニューウェーヴを追求している。とくにギャング・オブ・フォーやバグハウスなど、暗くノイジーなバンドの影響を強く受けている。例えるなら、ネオサイケにガレージを合わせたようなサウンドだ。

 

そこにはメロディーとラブソングは一切ない。あるのはノイジーで、やさぐれたギターの音。ベースはブンブンとうねり、キーボードの音は不気味で幻想的。例えるなら、視界が揺らぎ暗闇が広がる魔界の沼地で、神経質に不気味に鳴り響くような音。ニューウェーヴ特有の隔絶された孤独感こそないが、アグレッシヴで暗く、憂鬱な世界だ。

 

どうやらアメリカでは評価が二つに分かれているようだ。一つはエモやポップサウンドといった大衆性を捨てたとこによって、彼ら本来の魅力が失われてしまったことへの批評。もうひとつは過去の栄光やラブソングを捨て、オルタナティヴなサウンドを追求していることに対しての評価。

 

確かにここまで変化すると、本来の彼らからかけ離れすぎている感じがする。だがぼくはこの変化を好意的に受け止めている。彼らはけっして、過去の栄光やノスタルジーにすがっていないし、なにより単純にいい曲が多いから。ラヴソングを一切捨て、アグレッシヴなサウンドを展開している彼らはカッコいい。いい作品だ。