Hardcore For SYRIA(ハードコア4シリア)

12年に発表された全世界のパンク/ハード・コアバンドによるコンピレーション・アルバム。ハードコア4シリアとは、内戦でシリア軍によって、砲撃を受け家や家族を失った庶民の人道的をサポートするために設立された、非政治的オンラインメディア啓発プロジェクトだ。このアルバムを発売した理由は、現在も虐殺が続くシリアの現状を知ってもらうことを目的に、そしてアルバムによって得られた収益を、シリアの人道援助プロジェクト、Karam Foundationに、寄付をするために発表されたアルバムなのだ。

 

参加しているバンドは、――1曲目から順に挙げていくと――元ブラッグ・フラッグのキース・モリス率いるハードコア・バンドoff。タクヮ・コアバンドで有名なコミナス。ファット・レックコーズにも所属し、反戦、反核のメッセージを掲げているバンドで有名なアンチ・フラッグ。ドイツのポジティブ・メロディック・ハードコアバンドZSK。サタニック・サファーズなどでボーカルを務めたRodrigoが加入したスウェーデンのメロディック・ハードコア・バンド、アトラス・ ルゼィング・グリップ。こちらもスウェーデンのハードコア・パンクバンド、エージェント・アティテュード。またスウェーデンからニュースクール・ハードコア・バンド、レイズド・フィスト。スイスのニュースクール・ハードコア・バンドUNHOLD。フランスのヒップホップ、メタル、ハードコアのオネスタ。スイスのハードコアバンド、アニマル・インスティンクト。オランダからはヘルシーの流れを受け継ぐメタル系ハードコアバンド、ディス・イズ・ヒストリー。オーストラリアのハードコアバンド、ワード・アップ!。日本でも有名なドイツのハードコアバンド、ウォータダウン。 オーストラリアからガレージ系ハードコアのCrank。またオーストラリアからニューウェーヴ系パンクバンドのザ・ゴー・セット。スイスからメロディック・デスにニュースクールハードコアをブレンドしたバンド、パーティズ・ブレーク・ハーツ。スウェーデンからダムドのような高速パンクバンドのチッキング・ボムズ。スイスからブラッグ・フラッグ系ハードコアバンドのザ・ストラポンズ。スウェーデンからバーニング・ハートに所属していたことでも有名な59タイムス・ザ・ペイン。オーストラリアからランシド系パンクバンドのTopnovil。スウェーデンからアメリカン・オールドスクール系ハードコアのKvoteringen。シリアからアラブっぽいメロディーを取り入れたパンクバンド、Zinc。スイスから初期パンクバンドのEntwaffnung。トリニダード・トバゴからシンガロング・スタイルのパンクバンド、アンチ・エヴリシング。スイスからGBHスタイルのハードコアバンド、プレイ・トゥ・デストロイ。アメリカからカオティック・ハードコアのビアフット。スイスからメタルコアのUnveil。スウェーデンからオルタナ+デスコアのスォーム。またスウェーデンからノイズコアのデスパレード。そしてアメリカからドゥーム系タクヮ・コアバンドのAl-Thawra。

 

国ごとに挙げていくと、アメリカからは5バンド、ドイツは2バンド、スウェーデン8バンド、スイスから7バンド、オーストラリアから4バンド、フランス、オランダ、シリア、トリニダード・トバゴから1バンドづつ。計9カ国のバンドが、主催者の理念に賛同して楽曲を提供したのだ。シリア問題が世界中のハードコアバンドたちに、大きな影響をあたえたのか理解できる。それだけでも、このアルバムは成功といえるだろう。個人的には日本やイギリス、ブラジルのバンドが参加していないのは非常に残念だったが。

 

それにしても面白いサウンドを提供しているバンドばかりだ。最先端のハードコアを追求しているバンドから、頑なに昔ながらのオールドスクール・ハードコアの伝統を守っているバンド、古きよきハードコアに、その国ならではの地域性の音を取り入れたバンド、ハードコアの譜系の流れを無視して、違う体系からいいところだけを取り入れ独自の進化を遂げたハードコアバンドなどじつに多彩。まるでハードコアの万国記念博覧会のようだ。シリアの現状を知ることも重大な要素だが、世界的なハードコアを知りたい人にもお勧めの作品だ。