HOT WATER MUSIC(ホット・ウォーター・ミュージック)
『A Flight And Crash(ア・フライト・アンド・ア・クラッシュ )』

ア・フライト・アンド・ア・クラッシュ ア・フライト・アンド・ア・クラッシュ
ホット・ウォーター・ミュージック

エピックレコードジャパン 2001-07-18
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01年発表の5作目。彼らの最高傑作はこの作品。大手インディーレーベルであるエピタフに移籍したことによって、気合いの入った作品に仕上がっている。今作ではとくにメロディーに力を入れている。テクニカルでトリッキーなギターから、サイケデリック調のメロディー、古いブルースなどを取り入れ、パンクロックに、より深みが増している。男臭さは保持しているが、メロディーに重点を置いているため、若干武骨さは薄れ、ポップになった印象をうける。だが、彼らの音楽スタイルの特徴である、曲によって使い分けるクリスとチャックの2人のボーカル、シンガロングスタイル、複雑なギターワーク、タイトなリズムセクション、激しさとメロディーなどのバランスが、高い位置で交差している。この作品で彼らの理想としているサウンドが完成したのだ。

 

この作品が最高傑作の理由のひとつに、再び内省に目を向けている。エモ時代はサウンド的には未熟だったが、歌詞は独特の世界観を持っていた。ここでそのころの内面世界を突き詰めている。 たとえば3曲目の“ペーパー・シン”では<白い白い壁、病院/俺たちはみんな取るに足らない人間/紙のように薄っぺら/あやふやな状態で待っている/また答えひとつない日がやってくる>と、歌っている。そこでは自己の内面世界をひたすら凝視し続け、精神的探求を深め続けていった結果、病んだ精神状態にたどり着いた。すべての感情を虚無に塗り替える白い壁。感情を喪失する薬。まるでムンクの叫びのような隔絶した孤独な世界がある。

 

 そこにはいじけ淋しさなどの弱々しい感情はない。隔絶された世界でも、前へ前へと立ち向かっていく推進力がある。その姿勢は熱く男臭い。それがこの作品の魅力のひとつでもあるのだ。パンク界で孤高の輝きを放った素晴らしい作品だ。