Hot Water Music(ホット・ウォーター・ミュージック)
『Fuel for the Hate Game(フュー・フォー・ザ・ヘイト・ゲーム)』

Fuel for the Hate GameFuel for the Hate Game
Hot Water Music

No Idea Records 2000-09-14
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97年に発表された2作目。基本的には前作と同じエモーショナル・ハードコアで、男くさいボーカルや野太く分厚いギターに、メロディーパートが絡むシンプルで武骨なサウンドに変わりはない。だが今作ではフガジなどの影響が強くなり、不規則なリズムを叩くドラムや、トリッキーなベースラインなどが加わり、よりヴァラエティー豊かな作品に仕上がった。

 

基本的には重く荒い武骨なサウンドだが、緊迫感やひきしまったムードは漂っていない。激しい恐怖や怒りといった感情も見られない。むしろミドルテンポなため、一見、弛緩したムードが漂っているかのように思える。しかし終始がなり声で、ひとつひとつのリズムにな想いを叩きつけるように歌うボーカルからは、閉塞感と激しく闘っている熱い気持ちを感じる。サウンドにパワフルな力強さを注入しているのだ。

 

『ヘイトゲームの燃料』と名づけられた本作は、やはり内面世界を追求している。だが前作と違い、憎しみの根源にあるもの、怒りに火を注ぐ原因など、心の深遠にある感情を追求し、見つめている。たとえば“ブラック・ジョウ”では、産業の奴隷と化した他人を自分に置き換え、暗い洞窟に閉じ込められている状態に比喩し、そこから脱出できずもがき苦しんでいる姿を歌い、“ザ・スリーピング・ファン”では、歯車を回すモータを自分自身に置き換え、制御を失い狂い壊れていく様子を語っている。“ブラック・ジョウ”では、たまっていくストレスを、“ザ・スリーピング・ファン”では人生の歯車が狂い内部が崩壊していく様子を比喩を交えながら語り、それこそこが憎しみを産む原因であると、結論付けている。

 

この作品を彼らの最高傑作と言う人も多い。たしかに彼らのサウンドや独特な歌詞の世界は、この作品で確立した。だが個人的には、ボーカルの迫力とサウンドの豪快さがまとまりきっておらず、どこかぎこちなさを感じた。たとえば初期衝動が最高傑作と結びついているアーティストなら、そのぎこちなさや未熟さが彼らの最大の長所になる。だが、彼らの場合、どちらかといえば、円熟味で勝負しているアーティストのようにぼくは思える。でも個性を確立したという意味では、価値のある作品だ。