MY CHEMICAL ROMANCE(マイ・ケミカル・ロマンス)
『DANGER DAYS(デンジャー・デイズ)』

デンジャー・デイズ デンジャー・デイズ
マイ・ケミカル・ロマンス

ワーナーミュージック・ジャパン 2010-11-23
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10年に発表された4作目。過去の面影がなくなるほど、劇的に変わった作品。もはや彼らの個性であるゾンビメイクやダークスーツなどのヴィジュアル的な魅力はない。荒々しいサウンドや、初期から彼のコンセプトである<死>についての隠喩や屈折を交えた歌詞もなくなった。すべて捨て再出発をはかった。

 

彼らの変化の兆しは今作の前に発売された『ザ・ブラック・パレード・イズ・デッド』と名付けられたDVD付きのライヴアルバムからあった。そこに収められているMCで「ブラック・パレードはラスト・パフォーマンスになると宣言している。ここで死というコンセプトと黒い衣装を纏ったヴィジュアルに、終わりを告げたかったのだろう。そこまでして彼らがいままで築いてきたすべてを捨てたかった理由は、黒い衣装でゾンビメイクをすることに辟易したのと、 死を表現し続けることに対して疑問と限界を感じたからだ。このまま同じことを繰り返していれば、ミュージシャンとしてモチベーションを保つことは難しかっただろうし、生まれ変わる必要があったのだ。それと、いくらファンに評価されてもとどまることをよしとしない、彼らの元来の皮肉さが変化を求めたのだ。

 

そして今作では死とは対極にある生きている実感と衝動をテーマにしている。ヴィジュアルはバイカーのように男らしくなり、歌詞は変わらず恋愛をテーマにした内容が多い。だが、“プラネテリー”では<全部台無しにしゃえ>、とか、<一緒にパーティーを抜け出そう>や、<加速していくしかない>などの、ゼロからやり直して再出発をはかりたいといった内容が目立つ。そこには新しく始めることへの情熱も感じられる。

 

その気持ちが反映されているためか、サウンドもエネルギッシュで明るい。今作では初期パンクのような扇情的なサウンドに、ディスコ・エモなどのエレクトロの要素を合わせた。そこにはギターが水しぶきのようにキラキラと光って美しく、気持ちを高ぶらせてくれる。ビューティフルなメロディーと、生への躍動感を表現するようにエレクトロニクスがピコピコとなっている。まるで生きている実感を味わっているかのようなアドレナリン全快の衝動と、開放感に満ちている。やや内向きでダークで息苦しくも甘美な前作までとは、真逆の位置にある。

 

個人的には前2作のほうが好きだが、このアルバムにもいい部分がある。それは築き上げたすべてを捨て、前向きに新しいことにチャレンジしていく姿勢。これだけ売れると保守的になり、確立したイメージに固執するものだが、彼らはあえて変化した。それだけでも価値のある作品だ。