RANCID(ランシド )
『LET THE DOMINOES FALL(レット・ザ・ドミノズ・フォール)』

レット・ザ・ドミノズ・フォール(初回生産限定盤)(DVD付)レット・ザ・ドミノズ・フォール(初回生産限定盤)(DVD付)
ランシド

SMJ 2009-06-02
売り上げランキング : 231963

Amazonで詳しく見る by G-Tools

ん~。枯れた円熟味というか、妙にユルユルになってしまった印象を受ける。じつに6年ぶりとなる7作目は、カリプソとかカントリーなどの新機軸を見せながらも、いつものランシド節は健在。クラッシュやラモーンズを下地にした初期パンクに変わりはない。変わったところといえば、ウクレレっぽいギターの、極端にミニマムな曲などがある。そこでは、南の島の穏やかな夕暮れ時を連想させ、日が暮れ一日が終わる寂しさと、さざ波が砂浜をひっそりとぬらす、のどかな雰囲気が漂っている。

 

でもランシドって、パンクスの格好をした労働者階級特有の、育ちの悪さからくる情念が魅力ではなかったのか。たとえばハードコアを基調とした2ndや5stでは、荒くれた不良の匂いがガンガンに漂っているし、スカを推し進めた3rdや4stでは、貧しい黒人たちへのリスペクトやシンパシーが感じられた。嬉しさや悲しさ楽しさといった感情がスパークし、激しいエナジーを飛び散らせていた前作までと比べると、今回はやけに丸くなった印象を受ける。だが、けっして悪い作品ではない。富裕層や体制側には中指を立てているし、媚びていない。いい意味でチープな録音で、味わい深いギターの音色を出している。ただ今回、癒しやまったりした方向に向かっただけだ。その時々のリアルな精神性が反映されている。そういった意味では、純朴で素直な人たちなんだろうな。