Refused (リフューズド)
『Freedom (フリーダム)』

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Refused

Epitaph 2015-06-29
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15年7月に発売されたじつに17年ぶりとなる作品。2012年の再結成からワールドツアーを重ねて、よほどの手ごたえを感じたのだろう。一回限定の再結成ツアーが、アルバム発売までいたったのだから。あくまでも憶測だが、おそらく今作を発表した理由は、彼らの人気がスウェーデンだけに留まらず、全世界へと広がっていることに気付いたからではないか。日本でもそうだが、いままでおそらくアメリカでも伝説のバンドという、扱いだったのではないか。アメリカの大手インディーズメーカー、エピタフからの発売も手伝って、前作『シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム』は、それほど絶大なインパクトを残し、全世界へと普及した作品であったのだ。その実験的なサウンドは、安易な商業主義的な音楽とは一線を画し、一部の金持ちだけが暴利をむさぼる資本主義的な体制を徹底的に批判していた。たとえ周囲に評価されなくても、自分たちにしかありえないオリジナルティーを追求し、演りたいことを貫く。その実験性と攻撃的な闘争心にあふれたサウンドで、妥協を許さない信念に満ちたハードコア精神を貫いていた。その姿勢が神格化された要因だろう。

 

あれから17年の歳月が経ち、発売された今作は、前作の切り貼りしたフレーズがめまぐるしくクルクル入れ替わるカオティックなサウンド・フォーマットを踏襲している。だが、別のアプローチから進化させているため、前作とはまったく異なるサウンドを展開している。とくに70年代のエレクトロ・ファンクのリズムや80年代のLAメタルやスラッシュメタルなどのフレーズが目立つ。“ドーキンス・キリスト”は甘く魅惑的な女性のボーカルの声で始まるが、全体の骨格を担っているスラッシュメタルのリフが、地獄の黙示録のような雰囲気を作っている。“オールド・フレンズ/ニュー・ウォー”は、エレクトロ・ファンクという現代的な音楽に、12モンキーズのドラッギーな要素を組み合わせ、現代風にアレンジしているが、リズムがファンクだけにどこか古さを感じる。“ウォー・オン・ザ・パレス”はホーンや土臭いバーボンロックのようなギターフレーズが、ゴージャスなロックサウンドをイメージさせる。総じてこのアルバムから感じる雰囲気は、豹柄の服と革パンをはいた、キャバレーや派手なネオン管のサインと結びついた80年代末のアメリカロックのようなゴージャスで派手で淫靡な雰囲気。あるのは80年代の古いものを蘇らせたノスタルジー。ここには、前作のよさであった、道なき道を切り開いていくようなフロンティアスピリッツや、まだ誰もなしとげていない未知なるサウンドに挑戦していく気迫がない。いまの時代性の音楽を自分たちのサウンドに取り入れたり、前作を超える作品を作ろうとする気概や、ハードコアをさらに進化させようとする意思なども感じられない。

 

個人的な見解だが、おそらく本人たちもあまりにも神格化されすぎた前作を超える作品を作ることは不可能だと理解していたのだろう。だから、過去に発表したサウンドとは180°異なるジャンルの作品を発表するKYなアメリカアーティストのような自由さで、今回の現代のトレンドや過去の自分たちのサウンドを無視した作品を作ったのではないか。まさにタイトルどおり自由にやっている。まるで伝説と化した過去の評価を、自分たちで壊し、再構築している作品だ。そういった意味では、彼らのパンク精神は失われていないのだ。