Riot Ready presents Fuck Your Walls: Punk & Hardcore Compilation
(ライオット・レディー・プレゼンツ・ファック・ユア・ウォールズ:パンク&ハードコア・コンピレーション)

ロサンゼルスにあるグラインド・コアやアナーコ・パンクなどのジャンルを紹介したレーベル『Riot Ready Records(ライオット・レディー・レコーズ)』が08年に発表したコンピ。ジャケットの絵からもわかるように、反体制色の強いバンドたちが収録されている。

 

日本語で“自動車爆弾のパレード”という意味をもつバンド名のThe Car Bomb Parade(ザ・カー・ボム・パレード)は“generation fucked(同世代の人はクソだった)”というタイトルの曲を歌い、wolfpack(ウルフパック)は、“Sterilise Society(社会を殺菌する)”というタイトルの曲を歌っている。The Homisides(ザ・ハーマサイド)は“A.T.A. (Anti-Trump Army)反トランプ軍”というタイトルの曲で、トランプ大統領を直截的な表現で非難する。Poison Made Sinners(ポイズン・メイド・シナー)は“Angry Song(怒りの歌)”というタイトルの曲で感情むき出しの怒りを爆発させる。敵意というバンド名をつけられたAnticitizen(アンチシチズン)は、貧富格差の問題である“Class War(階級闘争)”について歌っている。どのバンドも、体制側への怒りや同世代や社会に対する敵意、政治家への怒りという部分では一致しており、筋金入りのポリティカルハードコアで、たとえ政権に圧力を加えられても自分の主張を貫く屈強な姿勢がうかがえる。

 

反社会性がメインのゴリゴリのコンピだが、サウンド面ではハードロックやインダストリアルなど、幅広いジャンルのバンドが収録されている。The Stifled(ザ・スタイフォド)はメロコアのようなメロディーフレーズが特徴で、エモーショナルな歌声が魅力。The Homisides(ザ・ハーマサイド)はConflict(コンフリクト)からの影響を多大に感じるひとを小バカにしたような挑発的なサウンド。SNU MeNはハードコアなサウンドにハードロックからの影響を感じるハスキーな歌声を載せた独特なサウンド。Kill Their Past(キル・ゼア・パスト)はニュースクール系ハードコアで、怒りを一点に叩きつけるような気合の入ったサウンドを展開。Anticitizen(アンチシチズン)はファストでノイズコアなサウンド。そしてVenom Lab(ベノム・ラボ)はインタストリアルという、このなかで一番変わったサウンドを展開している。どのバンドもルーツの違いが明確で、バンド同士がカブることのない個性的なサウンドを展開しているのだ。

 

世界各地で独裁色が強い政権が誕生し、市民の権利が薄れている昨今、一部の富裕層と権力者だけが富と権利を牛耳っている。メディア規制も強まり、政権批判をすればテレビや社会から抹殺される。言いたいことも言えなくなってきている世の中で、彼らは反トランプというスローガンを掲げ、率先して批判活動を展開している。ただ陰口を言うのではなく、行動こそがすべて。そういった意味で、このコンピへの活動は経緯が払えるし、重要で価値のある作品なのだ。