SAVES THE DAY(セイヴス・ザ・デイ )
『DAYBREAK(デイブレイク)』

デイブレイクデイブレイク
セイヴス・ザ・デイ

ビクターエンタテインメント 2011-09-06
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11年発表の7作目。自分探し第3弾。最終章となる今作のテーマは、受け入れること。当初、この作品は08年に発表予定であった。だがレーベルの移籍やメンバーチェンジなどのトラブルが生じてしまい、発表が3年延びてしまった。

 

とくにメンバーチェンジは深刻で、10年間在籍をし、ギターメロディーを担当していたデヴィットを含め、クリス以外のメンバーはすべて代わった。一度作った作品を、新たなメンバーで、再度、録り直したそうだ。一見ものすごいトラブルがあったように思われるが、クリス自身、このメンバーチェンジを前向きに捉えている。その理由は、前メンバーでのレコーディングが、しっくりこなかったから。メロディック・パンクなギターが持ち味のデヴィットとは違い、新メンバー、アランのギターセンスは、インディーロックやオルタナに影響を受けたサウンド。ギターセンスが違う新しいメンバーが加入したことによって、新鮮さをもたらし、理想のサウンドに仕上がったという。2年前にリリースしていたら、こんなにいいアルバムにはならなかったと、クリスは後日のインタビューで語っている。メンバーチェンジとレーベル移籍というトラブルが、アルバムに熟成期間を与えてくれたのだ。

 

そんなプロセスを経て完成した今作は、『イン・レヴァリー』の延長上にあるナイーヴな悲しみに満ちたオルタナティヴなサウンド。そこにグリーンディの『アメリカン・イデオット』のようなパンクオペラや、フランメコギターや、オルタナティヴな実験的なメロディーなど、新しい要素が加わった。“ディレンジド&デスペレイト”では、警告音のようなメロディーを導入し、今までにない新しい展開で、新メンバーであるアランの個性が遺憾なく発揮されている。

 

歌詞は、彼女と別れや、再会、そしてよりを戻すという順番で、曲は展開していく。まず始めの1曲目のパンクオペラの“デイブレイク”では、これまでの3部作を総括した内容で、彼女が去って心にぽっかりと開いた心の空白と苦しみをアルコールで紛らわしている。そこから心を掻き乱されるような苦しみを経て、時間がたつにつれ、傷口をなでるような落ち着きと優しさを取り戻し、悲しみを受け入れ、立ち直っていくという、物語を展開している。

 

そしてアルバム後半の8曲目の“リヴィング・ウィズアウト・ラヴ”では<俺たちは道に迷っている。引き裂かれ、褒め称え、批判する>と、彼女と別れた時期は、自分を見失っていたと、結論付けている。苦難を乗り越え、自分の気持ちが天気が晴れたような、清々しさとともに、劇的な結末を迎えていく。

 

今作のテーマである、受け入れることとは、苦しみや孤独などのすべてを自らの中に受け入れることだなのだ。そして第1章の怒りと、第2章の反省と後悔を経て手に入れたものとは、愛だったのだ。愛とは隙の延長上にあるものではなく、相手のいやな部分や欠点も受け入れること。達観した感情のことなのだ。この3部作の自分探しの答えとは、愛にあったのだ。

 

彼らが探していた答えが見つかったという影響もあると思うが、アルバムの後半では特に晴れ晴れとした感情があり、今まで彼らにあった満たされない思いが解消されている。挫折や苦難を経て、彼らが大人になった姿がある。それがこの作品の魅力なのだ。