Saves the Day(セイヴス・ザ・デイ)
『I’m Sorry I’m Leaving(アイム・ソーリー・アイム・リヴィング)』

I'm Sorry I'm LeavingI’m Sorry I’m Leaving
Saves the Day

Spirit Filled 2001-02-06
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99年に発表された5曲入りのEP。前作の野太いギターコードが特徴のメロディックパンクとは違い、ここではアコースティックギターを中心とした軽快なサウンドを展開している。エレキギターからアコースティックに代えたといっても、曲のベースになっているのはメロディック・パンク。だからテンポの速い曲が多い。さほどヴァラエティーに富んだ作品ではないが、なかには“アイ・メルト・ウィズ・ユー”のような、スミスに影響を受けたネオ・アコースティックな曲もある。

 

アコースティックギター中心のアルバムとは、ある意味ボーカルのごまかしの効かないサウンドだ。その理由は、アコースティックの軽快な音ゆえ、どうしてもボーカル中心のサウンドにならざる得ないからだ。だから音程が外れていたり、声が出ていなかったりすると、周りの音が小さい分、ごまかすことができない。声量や声色が顕著に目立つため、才能のあるボーカリストなのかどうか、簡単に判断できてしまうのだ。

 

そういった意味では、クリス・コンリーの透明で少年のあどけなさが残る歌声は、才能のあるボーカリストといえるだろう。ここではさらに悲しみと悔しさを含んだ表現なども見られ、感情の表現の幅が広がっている。とくに印象的なのが“アイム・ソーリー・アイム・リヴィング”。切なさを含んだアコースティックに、やりきれない想いを熱く叫ぶボーカルが印象的な曲。彼のサウンドにはエモの要素があまり感じられなかったが、ここでやりきれない気持ちを叫んでいる姿はまさにエモ。それこの先、彼らがエモと呼ばれる所以になった、きっかけの曲なのだ。

 

後世になると彼らもまたエモの代表格と呼ばれるようになるが、彼らがエモといわれる所以はサウンドではない。あくまでも青春の要素を含んだボーカル・スタイルにあるのだ。しかもこのあとダッシュボード・コンフェッショナルなどのアーティストが、アコースティック作品を発表したきっかけにもなった作品だ。この作品をきっかけの雨後の竹の子のように、アコースティック作品を発表するアーティストが増えた。そういった意味でも、後世に与えた影響も大きい作品といえるだろう。