Shai Hulud(シャイ・ハルード)
『Hearts Once Nourished With Hope & Compassion』

Hearts Once Nourished With Hope & CompassionHearts Once Nourished With Hope & Compassion
Shai Hulud

Revelation 2006-08-27
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日本では叙情コアと呼ばれているフロリダ出身のシャイ・ハルードの97年に発表されたデビュー作。ファーザー・シームス・フォーエバーのときにも触れたが、フロリダのパンクシーンとは、独特だ。ニューヨークやカルフォルニアでは、ジャンルごとにバンドが分かれ、メンバー同士の交流があまり見られない。だがフロリダでは、クリスチャン・ハードコアからエモやメロディック・パンク、スクリーモなど、異なるジャンルのバンドが交流を深め、独特のシーンを形成している。そんな環境で結成されたシャイ・ハルードは、エモからメロディック・パンク、クリスチャン・ハードコア、ニュースクール・ハードコア、メタルなど、ほかのシーンでは対立しているようなジャンルのサウンドが平気で融合している。ある意味ジャンルレスな稀有なバンドなのだ。

 

ギターのマット・フォックスとベースのデイヴ・シルバを中心に結成され、ボーカルはのちにニュー・ファンウド・グローリーのギターとして活躍するチャド・ギルバードが務め、ドラムはストロングアームと、のちのファーザー・シームス・フォーエバーで活躍するスティーヴが担当。フロリダ・パンク・シーンでは、有名なバンドのメンバーがそろった。そんなシャイ・ハルードの個性とは、アース・クライシスから発展したニュースクール・ハードコアに、クリスチャン・ハードコアのメロディーを合わせたサウンドだ。クリスチャンとストレート・エッヂが混在したハードコアなのだ。この時点ではまだ叙情的なメロディーよりも、金属質の重いリフ(初期ニューファウンドグローリーの代名詞となる)を重視している。

 

今作は、06年に新しくリミックスされ、新たなアートワークのジャケットが加えられ、再発されたリマスター盤だ。収録曲はオリジナル盤と変わらない。リマスターされているため、音はクリアだ。ハンマーで金属を叩きペシャンコにするような重いリフ。その隙間を這うように神経質に響く冷たいギターのメロディー。息苦しさとやるせない感情を怒声に乗せ、咆哮するチャドのボーカル。発狂したような狂ったスピード感のドラム。そこにはささくれだった心の痛みを歌っている。人間不信や裏切り、絶望、憎しみなどが歌詞のテーマだそうだ。毒々しいまでの苦しみと怒りと悲しみに満ちている。たとえば“ア・プロファウンド・ヘイトレッド・オブ・マン”では、<私の失望を言葉で表現することはできない。私の不満も言葉で表現することもできない。人間の深い憎しみ>と歌い、“フォー・ザ・ワールド”では、<自分自身を注ぎ出す~私のカップは空~私の希望はすぐに死んでしまった~私は一人で別の朝を過ごす~私を拒否した世界で。~私はあなたを憎む>と歌っている。

 

そこでは、自分の気持ちと感情を1人称で述べ、ひたすら内省を突き詰めている。そこには血が吹き出て、のた打ち回るような痛みがある。人間不信に陥った原因や出来事については一切語られていない。どうやらギターのマット・フォックスが彼女に振られた経験を歌にしたそうだ。それにしても大げさに感じてしまうほど、傷口が深い。このあとメロディーを重視していくが、この時期が精神的にもサウンド的にヘヴィーなハードコアを展開しているのは、この作品のみ。