SOCIAL DISTORTION(ソーシャル・ディストーション)
『HARD TIMES AND NURSERY RHYMES(ハード・タイムズ・アンド・ナーサリー・ライムス )』

ハード・タイムズ・アンド・ナーサリー・ライムスハード・タイムズ・アンド・ナーサリー・ライムス
ソーシャル・ディストーション

SMJ 2011-01-18
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エピタフへ移籍し、11年に発表された7作目。前作からじつに7年もの歳月が経っている。本来は07年に発売される予定だったそうだ。ここまで製作が長引いた理由には、もうスローペースでアルバムを発表していこうという意識が働いての結果だろう。その間、過去の名曲をリメイクした『グレイテスト・ヒッツ』の発売や、ベースとドラムの脱退もあったが、ネスの人生観を転換させられるような出来事は起こっていない。

 

今作では、3作前のアルバム『サムホウェアー・ビトウィーン・ヘヴン・アンド・ヘル』のような、アメリカ、ルーツ・ミュージックを意識して作られた作品だそうだ。でもカントリーやロカビリーの要素が強かった『ヘヴン・アンド・ヘル』とは違い、女性のゴズペル・コーラスや、ローリング・ストーンズ直系の70年代の猥雑なオルディーズ、ニューヨーク・ニューヨークなどの要素を取り入れている。いままでとは違った系統のルーツミュージックを取り入れ、ロックのゴージャスさや爽やかさをブレンドした作風に仕上がっている。

 

しかしこれだけ、哀愁を出したアルバムも初めてではないか。そこにはアメリカミュージックのアクの強さや、エネルギッシュさはない。あるのは枯れた円熟味や、明るさの裏側にある切なさと、爽やかな優しさ。そんな感情がアルバムを支配している。個人的には、この作品では、ネスの人生の総まとめに入っているような印象を受けた。とくに11曲目“スティル・アライヴ”(まだ生きている)では、刑務所から出所して、お前は終わった人間だと烙印を押され、そこから奮起したネスの半生について振り返っている。

 

そこで、描かれているネスの心情とは、自分の人生が終わるその日まで、プライドも恥も外聞も捨て、ただ好きなロックを純粋に楽しもうという決意。残された人生のカウントダウンが始まり、残された時間のなかで何が出来るのか、やれることは何でも試してみたい。けっして夢が叶わなくても悔いの残らない人生にするために、とくかく走り続けようじゃないか。そんな人生の終わりを意識した様子は、晴れやかでもあるが、どことなく寂しく切ない。

 

個人的には、とがったパンクの彼らが好きだが、これはこれでいい作品だ。切なく優しくなったといっても、深すぎる人生経験を経たネスにしか出せないサウンドだ。感動できるし、今回もまた自分の人生について考えさせられた。