Twitching Tongues (トイッチング・タングス)
『Disharmony (ディスハメニー)』

DisharmonyDisharmony
Twitching Tongues

Metal Blade 2015-10-29
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大手インディーレーベル、メタルブレイドに移籍して発表された3作目。前作の死神に恋をするという世界観をガラッと一新させ、前作よりもさらにスケール感が増した作品に仕上がっている。ぼくは前作『イン・ラヴ・ゼア・イズ・ノー・ロウ』のレビューで、この作品が最高傑作と書いた。その気持ちはいまも変わらないが、おそらくメタルが好きな人から見れば、今作を最高傑作に挙げる人も多いのではないか。前作がハードコア的な要素が強い作品とするならば、今作はメタルと呼べる作品に仕上がっている。

 

前作はシリアスで緊迫した空気が流れるなか、独特な静けさがあった。葬式のような死者の霊を愛しむ深い沈黙の静謐が魅力であった。そのサウンドはマッドボールから発展した新しい形の、ニュースクール・ハードコアなサウンドであった。今作ではその静謐が薄れ、代わりに土臭いアメリカ南部のサザンロック的な荒々しさが支配している。ボーカルもワイルドな歌い方に変わり、ギターの音は野太くなり、ソロパートなども加えている。複雑な展開はなく、サウンド自体は至ってシンプルでストレート。マストドンの影響が色濃いメタルな作品に仕上がっている。

 

ただマストドンとの違いを揚げるのなら、キリスト教の影響が色濃い神秘的なオルガンを不吉な音色に変え取り入れている。どうやら今作も前作同様にコンセプチュアルな作品らしい。現時点でそのコンセプトは何かわからないが、反キリスト的な異端の宗教と、愛の欠如や、愛の終わり、偽造され全世界へ布教された愛の話など、といった歌詞の内容が目立つ。今作では哲学的な思慮的なムードと、ニヒリズムが支配しているのだ。それがこのアルバムの特徴だ。前作とサウンドの違いこそあれ、漆黒に囲まれた、死神や反キリスト的な異端教、ダークな世界感は今作でも変わっていない。趣向の違いこそあるが、今作もすばらしい作品なのだ。