TAKEN (テイクン)
『CARRY US UNTIL THERE IS NOTHING LEFT (キャリー・アス・アンティル・スリー・イズ・ナッシング・レフト)』

CARRY US UNTIL THERE IS NOTHING LEFTCARRY US UNTIL THERE IS NOTHING LEFT
TAKEN

FALLING LEAVES RECORDS 2015-01-27
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日本では叙情系ニュースクール・ハードコアと呼ばれ、97年から04年まで活動をしていたカルフォルニア州オレンジカウンティー出身のバンド、テイクン。15年1月に、再結成&新作レコーディングを記念して、現在廃盤となっている過去3作品、『Finding Solace in Dissension』『And They Slept』『Between Two Unseens』を収録した2枚組みが発売された。

 

日本ではHOPESFALL(ホープス・フォール)やShai Hulud(シャイ・ハルード)と並び、叙情系ニュースクール・ハードコアの代表格と呼ばれているテイクン。叙情系ハードコアとは、従来のハードコアに、断末魔の苦しみのような叫びと、繊細なメロディー・パートが絡むサウンドことを言う。エモーショナル・ハードコアの発展系で、アメリカではリアル・スクリーモと呼ばれている。

 

そのなかでもテイクンは、安らぎと心地よさと、桜が散るような儚さに満たされた浮遊感のあるメロディーに特長があった。悲痛な叫び声と、荒々しくバイオレンスなハードコアのなかに、気品ともいえる美意識が漂っていた。それが彼らの個性でもあったのだ。

 

アルバムの構成は、ディスク1は04年の2作目のEP『Between Two Unseens』から5曲、02年のデビュー・アルバム『And They Slept』から5曲の計10曲が収録されている。ディスク2は、『And They Slept』から2曲、00年の1作目のEP『Finding Solace in Dissension』7曲の、計9曲が収められている。新しい作品から順に収録され、古い作品にさかのぼっていく展開だ。

 

『Between Two Unseens』は、メロディーに力を入れた作品ながらも、叫び声の迫力が増し、激しさと繊細さの境目がなくなっている。初期にあったころあった荒削りな部分がなくなり、滑らかに聴かせる仕上がりに。技術的に円熟の域を感じさせる作品だ。『And They Slept』は、前作『Finding Solace in Dissension』の延長上にある作品で、エモのように静のメロディーとハードコア激しさがくるくると入れ替わる展開。ボーカルもクリーン・ボイスと叫び声を使い分け、全体に荒々しさが目立ち、エモーショナル・ハードコアの要素が強い作品だ。そして『Finding Solace in Dissension』は、絶叫にザクザク刻むリフとノイジーなギター、ブラストビートの焦燥感が特徴的なハードコアな曲が多い。あくまでもメロディーをハードコアのエッセンスとして加え、勢いや衝動を重視している。

 

全体を通して聴いてみると、ベースにある儚いメロディーと叫び声にハードコアが加わったサウンドスタイルは、全アルバムを通して貫いている。だが後期になるほどメロディーが研磨されていき、初期になればなるほど、激しく暴力的なハードコアな衝動を感じる。彼らが目指していたサウンドとは、おそらく『Between Two Unseens』だったのだろう。ここで完成したから、潔く解散したのだろう。解散後、メンバーがメタルコアを志向ミコトと、メロディーをさらに追及したサーカ・サヴァイブに分かれたのが象徴的だ。桜が散るような儚いメロディーに激情の叫び声と高みに登っていくハードコアのノイズギターは、叙情系ハードコアのなかでは間違いなく5本の指に入る名盤だ。