The Walls Will Fall TERROR Alliance Trax 2017-04-27 |
西海岸はロサンゼルス出身のハードコア・バンドの17年に発表された(アルバムを合わせ計11枚目となる)5曲入りのEP。西海岸のバンドだが、フロントマンであるボーカルのスコット・ボーゲルがニューヨーク州バッファロー出身で、そのため彼らのサウンド的な特徴は、ニューヨーク・ハードコアの伝統的なスタイルを受け継いでいる。シック・オブ・イット・オールのOiコーラスを交えた男臭く硬質なサウンドから、アースクライシスのスローパートやノイジーなギターなど、ユースクルーとニュースクールのニューヨーク・スタイルを集約したバンドといえるだろう。
全作品を通してニューヨークのストイックで硬質なハードコアサウンドに変わりはない。だが、アルバムを発表するたびに、メタルサウンドをふんだんに取り入れたアルバムや、oiコーラスとシャウトにこだわったアルバム、ノイジーでよりアグレッシブになったアルバム、ブラストビート、メタルのギターフレーズ、ドラムのテンポの変化など、色々な要素を取り込み、バラエティー豊かに深化してきた。
そして今EPでは前作『The 25th Hour』の延長上にある、スローから急激にスピードが上がるストップ&ゴーの重く重厚なリフが特徴的なサウンドを展開している。そして注目すべきは、5曲目に収録されている“Step To You”。この曲はMADBALL(マッドボール)のカバー曲で、ゲストヴォーカルにはマッドボールのヴォーカル、Freddy Cricien(フレディー・)と、AGNOSTIC FRONT(アグノステッィク・フロント)のヴォーカル、Roger Miret(ロジャー・ミレット)が参加。ニューヨークのオールドスクール・ハードコアと、ニュースクール・ハードコアを代表する新旧世代のレジェンドによる夢の競演をはたしている。
肝心の曲だが、原曲のアレンジを変えず、忠実にカヴァー。違いがある部分といえば、ギターサウンド。全体に拡散するノイジーだったマッドボールのギターと比べると、音を絞った硬質なギターが持ち味のterror(テラー)の個性が発揮されている。ここには自分たちが好きだったマッドボールやアグノステッィク・フロント、それをひっくるめたニューヨーク・ハードコアへの限りない愛情と、伝統に対する誇らしい気持ちがひしひしと伝わってくるのだ。彼らの気合や、音楽への情熱、高いモチベーションになにも変わりはない。好作品だ。