Touché Amoré (トゥーシェ・アモーレ)
『Stage Four(ステージ・フォー)』

STAGE FOURSTAGE FOUR
TOUCHE AMORE

EPITA 2016-09-29
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エピタフに移籍し、16年に発表された4作目。彼らのサウンドは、ポスト・ハードコアやスクリーモという括りで語られている。だが絶滅してしまったジャンルを現代に蘇らせたバンドといえるだろう。そのサウンドとは、スクリーモがメタルのいちジャンルと化し、形骸化する前の、スクリームするエモという語源のバンドなのだ。

 

バンド名で例えるなら、Heroin (ヘロイン)や初期Still Life(初期スティール・ライフ)、Julia(ジュリア)など。それらのバンド影響を感じる。血の噴き出るようなスクリームや、静と動のアップダウンする展開などは、彼らからの影響が強い。そこに性急なビートを加え、よりファストにメロディックに進化したバンドなのだ。爆撃のような激しさと勢いに、妖艶で陰りのあるメロディーと、血の噴き出るようなスクリームが混然一体となった最高傑作と名高い『前作』。今作では前作で確立したサウンドフォーマットをベースに、さらにメロディーを追求した作品だ。

 

今作ではよりポップに、メロディックに爽やかな疾走感を加えたサウンドに進化した。メロディーの幅が広がった作品に仕上がっている。ここまでくるともはやメロディック・激情コアという内容だが、それはそれでいい作品だ。相変わらずすべてを出し切るような叫び声は健在で、そこにface to face(フェイス・トゥ・フェイス)のような切ない疾走感や、陰りのある穏やかで美しいメロディーが加わった。そして“Skyscraper(スカイスクレパー)”では、叫び声を捨て、穏やかで落ち着いた雰囲気を醸し出している。そこには深い森の中にひっそりと湧き出る泉のような、心落ち着く穏やかなやさしさと癒しに満ちたメロディーがある。いままでなかった新しいタイプの曲だ。

 

とはいっても相変わらず全力を出し尽くして燃え尽きるような、彼らの個性は失われていない。大衆受けするような、ポップな聴きやすさとか、悲しみや励ましなどの共感しやすい感情は一切求めていない。例えるなら、川の流れのなかで研磨され丸くなった石のような、滑らかでソフィスティケイトされた聴きやすさよりも、ごつごつと尖った岩のようなぎこちなさが残る荒々しい演奏を重視している。

 

滑らかさのない荒々しさや勢いを重視する姿勢には、うまく立ち振る舞うことのできない不器用なぎこちなさを感じる。彼らの魅力は、この作品でも変わっていないのだ。メロディーの深みを増した分、人間としてもニュージシャンとしても確実に成長の跡がうかがえる作品に仕上げっている。