SICK OF IT ALL(シック・オブ・イット・オール)
『Wake The Sleeping Dragon!(ウエイク・ザ・スリーピング・ドラゴン)』

WAKE THE SLEEPING DRAG

じつに4年ぶりとなる12作目。このバンドも息が長い。いまだ衰えない闘争心で、ガッツにあふれたファイトソングを歌い、不安や憂鬱さなどの負の要素が一切ない、困難を乗り越えていく強い意志と、エネルギッシュなサウンドを展開している。

 

そんな彼らの新作だが、その姿勢はブレることなく一貫してつらぬかれている。スピーディーで野太くもノイジーなギターに、怒声がシャウトし、力強いOiコーラスが団結心をかきたてる彼らしい個性の曲から、メロディック・パンクを取り入れた曲、ハイテンポからスローダウンする曲など、微妙に変化の富んだ曲がありながらもいつも熱く男くさいSICK OF IT ALL(シック・オブ・イット・オール)節がさく裂している。

 

今作では社旗問題に切り込んだ内容が目立つ。具体的な個人を攻撃した“Robert Moses Was A Racist”(ロバート・モーゼスは人種差別主義者だった)では、英雄と思っていた彼が差別主義者だと知って裏切られた思いや、“Work The System”(仕事のシステム)では、賃金を搾取する最高責任者(CEO)が賞賛される世の中への欺瞞と警鐘を訴え、“The New Slavery”(新しい奴隷制度)では、国家の権限を超越し大企業による支配が始まったと歌っている。

 

そしてWake The Sleeping Dragon(スリープドラゴンが目覚める)では人種の壁を乗り越え団結し、騙されていることから目覚め、高台で富を搾取している資本家たちへ戦えと、自由と権利を勝ち取るために立ち上がれと、聴くものに訴えかけている。資本家や体制に戦っていく姿勢。いつも通り聴くものに勇気と魂を熱くたぎらせる作品だ。