MILLENCOLIN(ミレンコリン)
『S.O.S』

じつに4年ぶりとなる9作目。スウェーデン・メロディック・パンクの第一人者。結成27年になるベテランだが、これまた熱くモチベーションの高い作品と活動を継続している。

 

彼らの個性とは、まるでドラマ『ふぞろいの林檎たち』のように、その年代特有の悩みや苦悩や成長などを、リアルに、赤裸々に、吐露しているところにある。Pennybridge Pioneers(ペニーブリッジ・パイオニアズ)以降、GREEN DAY(グリーンディ)やBLINK 182(ブリンク182)直系のメロディック・パンク・サウンドをベースにしながらも、08年作のMachine 15(マシーン15)ではJIMMY EAT WORLD(ジミー・イート・ワールド)のようなエモロックや、デジタルな要素を加え、True brew(トゥルー・ブリュー)では、悩みから吹っ切れたようなカラッとした明るいメロディックパンク・サウンドを展開していた。

 

今作も前作に引き続きスピーディーなメロディック・パンクを展開。開き直った明るさが魅力だった前作と比べると、今作ではダークで愁いを帯びた曲が増えた。“Nothing(ナッシング)”では、夢や目標を達成したが、そこには何もなかったと歌い、“For Yesterday(フォー・イエスタデー)”では精神的ストレスを抱えている人もいたと歌っている。そこには、新しいことにチャレンジしたとしても、20代のころのように新鮮さはなく、一度経験したものばかりで、何をやっても楽しめない憂鬱さや、上司からのプレッシャーで精神的ストレスを抱えている人など、40代特有の悩みがあるのだ。それがアルバムタイトルに込められた『SOS』の意味なのだろう。

 

どこにでもいそうなシンプルなメロディック・パンクで、一見何の変哲もないサウンドだが、これだけ魂を込められた作品もそうはいない。今作も熱くモチベーションが高く喜怒哀楽にあふれた素晴らしい作品なのだ。