Neighborhood Watch(ネイバフード・ウォッチ)
Grind, Death & Crust (Compilation)グラインド,デス&クラスト

現在のアナーコ・パンクの最前線にいるアメリカはロスアンゼルスのレーベル、Riot Ready Records(ライオット・レディー・レコーズ)の3枚目となるコンピレーション。

 

全45曲、計40バンドが収録。アンチ・ファシズムやフェミニズム、アニマルライツなどの政治理念を掲げたバンドを集めた前コンピ―レーションと比べると、今作ではクラストやデス、グラインドコアなどのヘヴィーな音にこだわりを持ったバンドを中心に収録されている。

 

ここには、グランドコアにほかのジャンルの音楽を加え、亜種進化的なオリジナルティーを追求したバンドはひとつもない。どのバンドも純粋に、より過激に、より激しい音を掘り下げ追求している。

 

マシンガンの銃声ようなドラムとノイズまみれのギターが印象的な“Slund(スルンド)”。道路工事の削岩機のように激しい振動の連打のドラムに圧倒される“Kill the Con Man(キル・ザ・コン・マン)”。豚の鳴き声のようなガテラルボイスでブルータルデスメタルの進化系である“Incarnate(インカーネイト)”。ハエの羽音のような“immobilizer(イモビライザー)”。狂ったコンピューターのような打ち込みドラムが衣装的な“Vast Slug(ヴァスト・スラッグ)”。高速連射のモールス信号のようなブラストビートの“Senseless Strife(センセレス・ストライフ)”。ブラストビートの連打が速すぎて低音と無音が細切れになり高周波のような不快音を放っている“Xeno Ooze(ゼノ・ウーズ)”。ほとんどのバンドがブラストビートというドラムテクニックを重視し、グラインドコアという括りのなかで、オリジナルティーあふれるサウンドを展開している。

 

それにしてもブラストビートだけでこれだけ多種多様な個性があるのには驚かされた。なかにはシリアスを通り過ぎてジョークに聴こえるバンドもいる。どのバンドも100メートルの世界新記録を塗り替えることが目的のようなテンションで、ひたすら過激な音とスピードを追求している。ここに収録されているバンドたちは、ハードコアやメタルなどのヘヴィーな音の最先端にいることに間違いはないだろう。

 

なおこのコンピの売り上げは、富の再分配を掲げている団体、Defend Boyle Heightsに寄付されるそうだ。音だけでなく思想も筋金入りのハードコアなのだ。

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