TOTAL FUCKING DESTRUCTION(トータル・ファッキング・ディストラクション)
『#usa4tfd 』

14年に解散したBRUTAL TRUTH(ブルータル・トゥルース)のドラム、Rich Hoak(リッチー・ホーク)率いるTOTAL FUCKING DESTRUCTION(トータル・ファッキング・ディストラクション)の4作目。

 

フル・アルバムとしては8年ぶりとなるが、これがすごい作品に仕上がっている。このバンドもブルータル・トゥルースと同様、グラインド・コアを展開しているバンドだが、スピード、テクニック、リズム感を一切無視した高速連射のドラミングなど、壮絶なドラムが魅力のバンドだ。BLACK FLAG(ブラッグ・フラッグ)からの影響が強いシンプルで扇情的なハードコア・ギターと、苛立ちを吐き捨てるようなボーカルを中心に、高速で短いファストな曲がならぶ。デス声やデスメタルの重厚なギターなど一切ないサウンド。それがTOTAL FUCKING DESTRUCTION(トータル・ファッキング・ディストラクション)の唯一無二の個性なのだ。

 

グラインド・コアにフリージャズや宇宙遊泳のような不思議な効果音を合わせた『Peace, Love And Total Fucking Destruction』。Converge(コンヴァージ)やThe Dillinger Escape Plan(デリンジャー・エスケープ・プラン)などのマスコアを取り込みよりカオティックに進化した『Zen And The Art Of Total Fucking Destruction(ゼン・アンド・ザ・アート・オブ・トータル・ファッキング・ディストラクション)』。プリミティブなハードコアの怒りと激しさを全面に掲げた『Hater(ヘイター)』と、いままでいろいろな要素を取り込み実験的なサウンドを展開していた。

 

今作では『Hater(ヘイター)』のサウンド路線を踏襲し、より激しく、より重たいサウンドの作品に仕上がっている。とくに迫力を増しているのが、尋常でない迫力のドラム。“Mothers’ Meat(マザーズ・ミート)”では、狂ったスピードの迫力あるドラムが土石流のような勢いで迫ってくる。変わったところではハードロックのギターソロのような“World War 4(第四次世界大戦)”や、ホーラー映画の笑い声を取り入れた“Is Your Love A Rainbow(イッツ・ユア・ラブ・ア・レインボー)”など、新しい要素を取り入れた曲もある。

 

“World War 4第四次世界大戦”や“A Note to My Future Self(未来の自分をノートに書く)”や“Anarchy Chaos Collapse Comedy(アナーキー、カオス、崩壊、コメディ)”では、彼ららしい皮肉やニヒリズムと屈折したユーモアに満ちた世界は健在であるが、将来戦争に発展するような悲惨な未来を予見しているような、珍しくストレートな表現がちりばめられている。

 

前々作ではAnal Cunt (アナルカント)のボーカル、Seth Putnam(セス・パットナム)について歌った“Seth Putnam Is Wrong About A Lot Of Things, But Seth Putnam Is Right About You”があり、前作はMAN IS THE BASTARD(マン・イズ・ザ・バスタード)に引っ掛けた“Human Is The Bastard”があった。そして今作の“Anal Trump Is Gay”では、Anal Trump(アナル・トランプ)をオマージュし、相変わらずグラインドコア・シーンへのリスペクトと愛は健在。

 

このバンドの魅力といえば、グラインド・コアへのこだわりとさらなる進化。そしてパンク・ハードコアの煽情的な怒りと苛立ちというアティチュードを持ったサウンド。今作でも皮肉で屈折したユーモアで世間を批判する姿勢は貫かれているし、なにより腕が引きちぎれるくらいの一球入魂したドラムの壮絶テクニックは、グラインドコアをネクストレベルに押し上げている。いまだ勢いは衰えず、今作もすばらしい作品なのだ。