SECT(セクト)
『Blood of the Beasts (ブラッド・オブ・ザ・ビーストズ )』

ニューヨーク出身のヴィーガン・ストレートエッジ・バンドの3作目。Trash Talk (トラッシュトーク)やNALIS(ネイルズ)と同様に、バリバリ響くノイズギターを中心とした、最先端のハードコア・サウンドを展開している。今作でもそのサウンド路線に変わりはない。前作よりも、さらに過激に、よりスピーディーに、よりノイジーに、より重いサウンドに、深化している。

 

今作のアルバムタイトルは、フランスで1949年に上映された、ジョルジュ・フランジュ監督の食肉処理場ドキュメンタリー映画、『獣の血(英語読みでブラッド・オブ・ザ・ビーストズ)』から採用。残酷な内容の映画で、首を刎ねられた牛や羊がピクピク動き、皮を剥ぎ、肉を切るシーンは、食肉加工のおぞましい現場をリアルに生々しく伝えている。

 

今作では映画の屠殺の残酷さを、サウンドで忠実に再現することがコンセプトになっている。歌詞には“屠殺場で皮膚のしわから蒸気が上がる”などのリアリティーのある言葉が目立ち、機械のように無感情で淡々と動物を殺していく屠殺場の残酷さをイメージさせる。

 

その臨場感のあるサウンドからは、まるで業火に焼かれているような苦しみや、断末魔の叫びのような絶望を感じることができる。圧迫するような恐怖がひしひしと伝わってくるのだ。

 

アニマルライツ(動物の権利)だけでなく、そのほかにもメキシコ国境の壁についての人種差別への抗議や、ドラッグで崩壊した家庭などについても歌っている。総じて伝えたい内容は、動物の虐待や差別主義者の独裁者の台頭に、無自覚でいる庶民への警鐘なのだ。

 

今作でもプロテストソングの高いモチベーションを保ち、ヴィーガン・ストレート・エッジという信念を貫いた、熱い作品なのだ。