Dorpdead(ドロップデッド)
Demo2019

19年に発表されたデモEP。91年から活動を始め、パワーバイオレンス・シーンの創始者のバンドの一つとして知られているドロップデッド。Unholy Grave(アンホリー・グレイヴ)やCONVERGE(コンヴァージ)などのバンドとスプリットを出しながら、現在も地道な活動を続けている。

 

1分という短い時間のなかに全身全霊をかけてすべてつぎ込むパワーバイオレンス。グラインドコアから進化したサウンドで、ファスト・コアのなかにストップ&ゴーや、ハイスピードからスローテンポにシフトチェンジする要素を取り込み、ガテラルボイスを絶叫やハイテンションに変え、パワーバイオレンス(力の暴力)を強調させたサウンドなのだ。

 

ドロップデッドとは、SPAZZ(スパッツ)やMan Is the Bastard(マン・イズ・ザ・バスタード)と同様に、パワーバイオレンスの創始者のひとつとして知られるバンドだ。そんな彼らの特徴とは、Discharge(ディスチャージ)やCRASS(クラス)などのアナーコパンクなどの80年代のハードコアをパワーバイオレンスに取り込んだサウンド。ドロップデッド(落とす死)と名付けられたバンド名は、ボストンのグランドコアの先駆者であるSIEGE(シージ)のアルバムのタイトル名からとったのだろう。だがそこにはもう一つの意味があり、おそらく原爆のことを示唆しているのだろう。広島でのライヴアルバムなどもあり、戦争の残酷さや、反戦争などのアティテュードを掲げているバンドでもあるのだ。

 

そんな彼らのサウンドとは、1分以内のファストな曲のなかに絶叫やブラストビート、ノイジーなギターのハイテンションを詰め込むパワーバイオレンス。サウンド的にはボストンのグランドコアの先駆者といわれるSIEGE(シージ)からの影響が強く、全作品を通じて、メタルや他ジャンルからの影響がまったくない純粋なハードコアをベースにしたサウンドを展開。アルバムごとに、ノイズコアよりの作品もあれば、2ビートのハードコアなど、微妙な変化こそみられるが、一貫してブレない姿勢を見せている。

 

デモ2019と名付けられた今作は、19年の春に録音した28曲のデモのなかから、選りすぐりの10曲をバンドキャップにて販売。将来発表される3作目のアルバムに収録予定の曲から厳選されたそうだ。タイトルや歌詞は仮のようだが、それなのに発表した理由には、6月に盗まれた車の資金を調達するために、急遽販売したそうだ。

 

肝心のサウンドだが、今作では骨太なギターが印象的なハードコア・パンクなサウンドを展開している。絶叫やハイテンションなパワーバイオレンスは曲ない。80年代のシンプルなハードコア・パンクを短くしたような曲郡で、やはり未完成な印象は拭えないが、彼らの曲作りの工程がよく分かる内容なのだ。おそらくこれから原曲のシンプルなハードコアに、過激でノイジーなギターを載せ、ボーカルの絶叫を加え、粘土細工のようにいろいろな要素を加えては捨てながら、ブラッシュアップし、完成形に仕上げていくのだろう。そんな工程が容易に想像できる作品なのだ。

こちらからダウンロードできます。