INUS
『Western Spaghettification(ウエスタン・スパゲッティケーション)』


サンディエゴ出身のINUSのデビューEP。バンド名の由来は(The Universal for Navigating the Universal Self)を略してINUSで、カオティックでエクスペリメンタルな音楽を追求しているバンド。日本語で表記すると『全般的な操縦は全般的な自己』といういみで、なんだか意味がよく分からないバンド名だが、暴走したピアノから、制御の失った一昔前の古いデジタル音、電話から流れるインターネットの回線音、馬の鳴き声、なよなよした高音の猫なで声のボーカルにいたるまで、すべて音程の外れた音だけを寄せ集め、奇怪なサウンドを展開している。まるで100円ショップのようなチープでジャンクな素材を寄せ集め作った音。バンド名と同様に、わけの分からない混乱したカオティックなサウンドなのだ。

 

これだけデジタル音を詰め込んだら、普通もっと機械的で無機質なものに感じるだろう。だがここには、むしろ人間の温かみさえ感じる。その理由はおそらく、一昔前の古いデジタル音に、あえて音質を悪くして作ったサウンドを意図的にうまく融合しているからだろう。音程の外れた音からは人間の情けなさや愚かさといった感情を喚起させ、情けなさやジョークの奥に潜む狂気を感じる。

 

また一昔前のデジタル音を取り入れるという、だれも今まで誰もやったことがなかった新しさがある。唯一無二の独特なサウンドを持ったバンドなのだ。