KALEIDOSCOPE (カレイドスコープ)
AFTER THE FUTURES… LP(アフター・ザ・フューチャーズ…LP)

ニューヨーク出身のパンク/ハードコア・バンドのEP合わせて7枚目となる作品。ニューヨーク・ハードコアといえば、マッチョな不良が多いクロスオーバー・シーンか、ストレートエッジ・ムーヴメントを起こしたユースクルー・シーンの、どちらかをイメージするだろう。だが彼らはどちらのシーンにも属さない、異端なバンドなのだ。

 

REAGAN YOUTH (レーガン・ユース)からBORN AGAINST(ボーン・アゲインスト)へと続く、ニューヨーク・ハードコアの裏シーンのバンドで、ポリティカルなアティテュードと、アナーコ・パンクの伝統を受け継いでいる。BLACK BOOT(ブラック・ブート)、DEFORMITY(ディフォーミティ)、IVY(アイヴィー)、JJ DOLL(ジェイ・ジェイ・ドール)等、現行NYハードコア・パンクシーンで活動するShiva Addankiらのメンバーらによって結成された。バンド名のKALEIDOSCOPE (カレイドスコープ)とは、万華鏡のことで、その名の通り、サイケデリックな要素をパンク/ハードコア・サウンドに散りばめている。

 

そのサウンドは、レーガンユースや初期Sonic Youth(ソニックユース)、CRASS(クラス)などのノイジーなパンクサウンドをベースに、インドのシタールや、奇怪な電子音、トライバルなリズムと合わせ、トランシーで、サイケデリックトランシーなサウンドを展開している。

 

今作でも、ノイジーでサイケデリックなサウンドに変化はない。ただ前作と比べると、サイケデリックな要素は薄れ、よりハードコアで激しくノイジーに満ちたサウンドに変化している。性急なパンク・サウンドの“DEFCON(デフコン)”から、怒りの言霊を叩きつけるような“ZERO TOLERANCE(ゼロ・トレランス)”、警告音のようなギターが印象的な“AFTER THE FUTURES(アフター・ザ・フューチャーズ)”、爆撃を受けた街のようなノイズと破壊や熔解によって歪んだサイケデリックなサウンド“SIGINT – E.K.I.A.(シギント-E.K.I.A)”、怒りが焦燥をかきたてるリズムによってピッチが上がっていく“DEVELOPMENT CRISIS(ディヴェロメント・クライシス)”、すべての曲がノイジーで不穏な空気に包まれ緊迫感に満ちたサウンドを展開している。

 

簡潔な言葉で怒りを吐き捨てる怒声からは、尋常でない怒りを感じる。歌詞は、<多国籍軍隊の下でネットワーク化された職業>や<奴らはあらゆる反対を破壊する>、<最も貧しい人たちがつねにリスクを負う>、<貧困と腐敗>といった内容が目立つ。そこには世界を支配するアメリカ政権へと、世界の富を収奪するグローバル企業への怒りを感じる。アメリカ全体の社会問題を問いただすような内容なのだ。

 

ノイズ、ハードコア、アナーコパンクをサイケデリックなデジタル音とブレンドし、怒りに満ちたサウンドは、腐敗した政権に正面から立ち向かう、まさに正統派パンクと呼ぶべきバンドだ。今作も闘争的で素晴らしい作品なのだ。

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