CRO-MAGS(クロ-マグス)
From The Grave(フロム・ザ・グレイブ)

Agnostic Front (アグノスティック・フロント)、Murphy’s law (マフィーズロー)と並び、ニューヨーク・ハードコアの創始者の一つとして知られるクロ-マグス。John Joseph(ジョン・ジョセフ)とHarley Flanagan(ハーレー・フラナガン)が対立し、現在2つのCRO-MAGS(クロ-マグス)が存在する。今回発表されたEPは、ハーレー・フラナガンが制作した作品。昨年19年ぶりに発表された前EPに次ぐ、2作目のEP。

 

86年に発表された『The Age Of Quarrel(ジ・エイジ・オブ・クォーレル)』は、メタルとハードコアを、重く金属的にクロスオーバーし、独特なスタイルを確立した作品だ。その後のニューヨーク・ハードコアのひな型を作ったバンドといっても過言でないほど、後世のニューヨーク・ハードコアのバンドたちに多大な影響を与えた。

 

当時はニューヨーク特有のクロスオーバーと言われたが、いまとなってはスタンダードでベーシックなオールド・スクール・ハードコア。今作でも前EPに引き続き、『ジ・エイジ・オブ・クォーレル』と『Best Wishes(ベスト・ウィッシュレス)』の延長上にある作品で、クロ-マグスらしいサウンドを展開している。

 

EPは3曲入りで、トラウマのようなダウナーなインスト曲と、金属的で硬度の高いギターと男くさく野太い歌声のパワフルで力強いハードコア・サウンドを収録。野太く低い歌声には、どこか苦悶の表情が伺え、シリアスなムードが漂っている。

 

今作では個人的な悩みについての歌詞が多い。“PTSD(心的外傷後ストレス障害)”では、戦争という巨大な暴力と怒りと罪悪感について歌い、“From the Grave(墓から)”では、何度も友達に裏切られたと、リアルな体験談について歌っている。まるで苦しみと向き合い、カウンセリングを受けているかのような告白。もだえながらも苦難を乗り越えとする姿があるのだ。

 

ハーレー・フラナガンといえば、自分の後釜としてクロ-マグスでベースを担当したMike Couls(マイク・クールス)をナイフで刺し、もう一人のメンバーを噛んで逮捕されたりと、数々の事件を起こした人物である。おそらく軍人のように頑固で感情的になりやすい人なのだろう。穏やかで人がよさそうなジョン・ジョセフのほうが人気があるそうだ。だがハーレーのクロ-マグスに対する情熱は本物だし、たくさんのアルバムを発表し、何かと熱心でアクティブに活動している。今作からも熱はものすごく伝わってくる。ニューヨークという大都市の暗さと甘美な苦痛を感じるいい作品だ。