Fake Names(フェイク・ネイムス)

現Refused(リュフーズド)のボーカル/Dennis Lyxzén(デニス・リクセン)、Bad Religion(バッド・レリジョン)とDag Nasty(ダグ・ナスティ)のギター/Brian Baker(ブライアン・ベイカー)、S.O.A.や Embrace(エンブレイス)などのDCコア・シーンで活動しているドラム/Michael Hampton(マイケル・ハンプトン)、同じくDCコア・シーンのバンドGirls Against Boys(ガールズ・アゲインスト・ボーイズ)とSoulside(ソウルサイド)のベース/Johnny Temple(ジョニー・テンプル)によって結成されたFake Names(フェイク・ネイムス)のデビュー作。

 

Fake Names(フェイク・ネイムス)というバンド名は、SNSで嘘の報道を拡散し不安と混乱に落としいれている“フェイク・ニュース”からもじり命名。INVSNなどのバンドを結成しては休止しているDennis Lyxzén(デニス・リクセン)と、Bad Religion(バッド・レリジョン)が休みの間にDag Nasty(ダグ・ナスティ)で活躍しているBrian Baker(ブライアン・ベイカー)の結成だけあって、おそらくお互いにサイド・プロジェクト的な意味合いが強いのだろう。

 

ポリティカルな姿勢を貫き、ポスト・ハードコアな実験的なサウンドが特長のRefused(リュフーズド)と、ハードコアにメロディックな要素を取り入れたBad Religion(バッド・レリジョン)/Dag Nasty(ダグ・ナスティ)で活躍している両者の融合。ここで展開されているサウンドは、パンクがメロディック・パンクに変わる前の、煽情的で攻撃的な要素を持ったオーセンティックな初期パンク。初期Refused(リュフーズド)にあったAメロ、Bメロがないすべてがサビのようなデニスの歌い方と曲進行に、ボーカリストの個性を引き出すことに徹した黒子のようなブライアン・ベイカーのギターアレンジが、見事に融和している。

 

パンクの勢いそのままに、終始高い熱量でぐいぐい押していく展開。とくに“Weight(ウェイト)”や“This Is Nothing(ディス・イズ・ナッシング)”では、シャウトするボーカルの隙間を、火花が散るようにスパークするブライアン・ベイカー特有のメロディーが、遺憾なく発揮されている。勢いある熱さのなかに爽やかさを感じるパンク・サウンドなのだ。

 

歌詞はRefused(リュフーズド)の延長上にある、新自由主義への批判や、民主主義の尊厳、人生観などについて。“Driver (ドライバー)”では、<構築された死の経済>と歌い、軍需産業への痛烈な批判と思える内容で、“Darkest Days(最も暗い日)”では、<暗闇から抜け出す道を照らす>と、人生でうまくいかない時期のやり過ごし方について歌っている。

 

反新自由主義という政治思想の信念を貫き、上手くいかない時期の乗り越え方を経験してきたベテランらしい歌詞の内容なのだ。近年、政治批判をする若手のパンク・バンドたちは少なく、もはやベテランと呼ばれるバンドたちしか体制批判をしていない。失われつつあるパンク精神にスポットを当てた、シンプルで直截的なパンクの魅力が詰まった素晴らしい作品なのだ。