TOUCHE AMORE(トゥーシェ・アモーレ)
『Lament (ラメント)』

ロサンゼルス出身の激情エモ・バンドの6作目。前作でも書いたが彼らのサウンドとは、スクリーモがメタルの一ジャンルとして形骸化する前の、激情コアなサウンドを現代風にアレンジし、よみがえらせたバンドだ。いうならHeroin(ヘロイン)やPg99、Antioch Arrow(アンティオック・アロー)などのGravity Records周辺のバンドを、メロディックにブラッシュ・アップしたサウンドといえるだろう。

 

4作目の『Stage Four(ステージ4)』では14年に末期癌で亡くなったボーカルのボルムの母親について歌い、バンドはおもに個人的なトラブルから起こる絶望や苦悩について歌っている。もがき憤り葛藤しながら前へ進んでいる姿が印象的なバンドなのだ。

 

嘆く、憂い、悲しみといった意味を持つ『Lament(ラメント)』というタイトルが付けられた5作目では、いままでになく静けさと悲しみに満ちた作品に仕上がっている。叫び声を中心とした激情を吐露するバンドだったが、今作では勢いや衝動よりもセンシブな感情を重視。“Lament(ラメント)”では、冷たく悲しみと憂鬱さに満ちたメロディーが印象的で、“Reminders(リマインダー)”では、シンガロングやエモの静と動の感情がアップダウンをする曲調を取り入れている。“Limilight(ライムライト)”では、低音なメロディーのギターが印象的なミニマムな演奏で功名心にとらわれ疲れ切った心情を赤裸々に吐露。そして最後の“A Forecast(ア・フォアキャスト)”は、穏やかで落ち着いたピアノから始まるバラード曲で、失ったものや失敗から学んだことなどの悔悛に満ちた想いを素の声で淡々と歌っている。

 

いままでの作品のように、激情という衝動で突き抜けるのではなく、立ち止まって熟考しているような思慮深さが加わり、バラエティー豊かな作品に仕上がっている。激情と静けさのコントラストや悲しみと憤り、憂いと悔悛といった2面性があり、深い感情を表現しているのだ。

 

ベースにある激情は保持しながらも、その反対側にある静けさや穏やかさといった要素を加え、より深みが増している。よりカラフルに、よりメロディックに、さらに深化した作品なのだ。