Departed(ディパーテッド)
『 Darkness Reigns(ダークネス・レイングス)』

ニュージャージ出身のメタリック・ハードコア・バンドの2作目。かなり独特なサウンドを展開しているバンドで、ひさびさにオリジナルティーあふれるハードコア・バンドに出会った。

 

All Out War(オール・アウト・ウォー)や Deeds of Flesh(ディーズ・オブ・フレッシュ)、Sworn Enemy(スウォン・エネミー)、Internal Bleeding(インターナル・ブリーディング)などの、重厚でドスの効いたブルータル色の強い、ニューヨークの90年代メタリック・ハードコアをベースに、Behemothの悪魔召喚のブラックメタルやスクリーモのコーラス、トランシーな効果音などを加えたハイブリッドなハードコア。

 

90年代のメタリックなニュースクール・ハードコアに、ブラック・メタル、トランス、スクリーモなどが混ざったサウンド。それが彼らしかありえない唯一無二の独特なサウンドなのだ。

 

首を絞められたときのような息苦しい喘ぎ声あげるボーカル。スピードの緩急がめちゃくちゃで変則的なリズムを叩くビートダウンのドラム。魔界をイメージさせる不穏なコーラス。発狂のようなうねりを上げるギター。不協和音なリズムで、そのサウンドには絶望や甘美な苦痛、不信感に彩られている。

 

“God Is Money(ゴッド・イズ・マネー)”では、<あなたの神はお金、あなたの神は戦争。>と歌い、人間の奥底に潜む欲や憎悪といった醜い感情をさらけ出し、“Blood For Blood(血のための血)”では、<あなたの腐った死体の墓に小便>と、ゴアグラインドのような残虐描写で、猟奇的な感情をむき出しにしている。“Nails(ネイルズ)”では、<私はあなたを苦しませる。~私は十字架につけられたキリストの釘です>と、人間の憎悪について歌い、“Darkness Reigns(ダークネス・レインズ)”では、<闇が支配する、審判の日が近づいており、地球上であなたを救うものは何もない。>と、救われないことに対する絶望を歌っている。

 

歌詞は、神の救済を受けられない人の立場で語られ、救いを求める人間の醜さや、欲望への憎悪、絶望とニヒリズムなどのあらゆる負の感情が、台風の渦のようにすべての負の感情を包み込んでいる。

 

まるでノストラダムスの大予言を信じていた子供のころに感じたような、不吉な予感と、将来への絶望、何をやっても無駄なのだと感じるニヒリズム。そんな感情が巨大な暴力と憎悪となって襲い掛かってくる、ヘヴィーで重く絶望的なハードコア・サウンド。ハードコア界でもかなり独特なバンドなのだ。