face to face(フェイス・トゥ・フェイス)
『NO WAY OUT BUT THROUGH (ノー・ウェイ・アウト・バット・スルー)』

Green Day(グリーンディ)やoffspring(オフスプリング)、NOFXなどのバンドと一緒に90年代を代表するメロコア・バンド、face to face(フェイス・トゥ・フェイス)の通算9作目。

 

前作は2作目の『Big Choice(ビックチョイス)』のような原点回帰のサウンド路線で、ひさびさにスピードとメロディーを重視した作品だった。今作でもメロディーとスピード感を重視し、3作目の『face to face(フェイス・トゥ・フェイス)』にある“Can’t Change the World”のサウンド路線で、メロディックで疾走感あるメロコアを展開している。

 

男くさく爽やかなコーラスや薄暗い室内に木漏れ日のように幻想的で静かにうねりを上げるベース、明るさの陰にある切ないメロディーは健在。そして彼らを語るうえでは外せない切なさと疾走感。相変わらずface to face(フェイス・トゥ・フェイス)節は健在なのだ。とはいっても、けっしてマンネリになっていない。メロディーのバラエティーが豊富で、さらに聴きたくなるほどの中毒性にあふれ、輝きはなっている。

 

『逃げ道はないが、通り抜ける』というタイトルが示す通り、突風のなかを突き進むような、恐怖を感じながらも前へ進んでいく曲が多い。アルバム全体には、人生の様々なトラブルや問題を乗り越え、自分がさらに成長するというメッセージが込められているそうだ。タイトル曲の“NO WAY OUT BUT THROUGH (ノー・ウェイ・アウト・バット・スルー)”では、袋小路に追い込まれ、逃げ場がなくなったときの対処法について歌い、“Ruination Here We Come(私たちに破滅が来る)”では、団結を拒否し憎しみや悪意に満ちた感情のために破滅が訪れると歌っている。そしてラストの“Farewell Song(別れの曲)”では、いろんなものに挑戦し、多くを失ったことについて歌い、ベストを尽くし燃え尽きたような感情で、アルバムは終わる。

 

暗く憂欝で切ない曲が多い。でもその暗さが最高だ。ぼくがface to face(フェイス・トゥ・フェイス)に求めていた、男くさくも切なく繊細で疾走感のあるメロコアが、ここにはある。衝動にあふれた粗削りな若さこそ、枯れた円熟味という新たな魅力に変わったが、これは素晴らしい作品。