The Return of The California Takeover (ザ・リターン・オブ・ザ・カルフォルニア・テイクオーバー)

96年4月にロスアンゼルスで、Earth Crisis (アース・クライシス)、STRIFE(ストライフ)、SNAPCASE(スナップケース)の3バンドで行われたライヴを収録し、ヴィクトリーレコーズから発売された『The California Takeover (ザ・カルフォルニア・テイクオーバー)』。発売から25年の年月が経ち、2020年2月に同じ3バンドによる記念ライヴがロスアンゼルスにて行われた。そのライヴを収録したのが、今回発売された『-The Return of The California Takeover (ザ・リターン・オブ・ザ・カルフォルニア・テイクオーバー)』だ。

 

96年に発売された『The California Takeover (ザ・カルフォルニア・テイクオーバー)』は、ヴィーガン・ストレートエッジという思想を立ち上げたEarth Crisis (アース・クライシス)、チュガ・チュガ・バッファロー・ハードコアという独特なサウンドスタイルを持っていたSNAPCASE(スナップケース)、メタリック・ハードコアにシンガロング・Oiなどを取り入れた西海岸の独特の進化を遂げたSTRIFE(ストライフ)と、当時3バンドともハードコア界のなかで、独特な個性を確立したバンドだった。新進気鋭のニュースクール・ハードコア・バンドたちで、どのバンドも自分たちの信念の主張はもとより、世の中を変えてやるみたいな気迫と熱気を、閉じ込めたライヴだった。

 

あれから25年が経ち、当時の状況を再現した今作では、ベテランらしい落ち着きと貫禄があるライヴ盤に仕上がっている。やはり当時のような世の中を変えてやるといった初期衝動を感じない。だからといって決して悪い作品ではない。肌を刺すようなヒリヒリとした感覚こそないが、代わりにシリアスで深刻な重さが加わっている。ライヴ全体を支配しているのは、環境破壊などの危機を深刻に訴えかけるみたいなシリアスな空気。衝動よりもスローで落ち着いたライヴのため、金属質なギターのリフが感情深く重く刻み、ボーカルの怒声にはより深刻で説得力が増している。

 

サウンド的には90年当時と全く変わっていない。だが彼らのヴィーガン・ストレートエッジ思想は、時代とともに心への突き刺さり方が変化している。90年代の懐かしく感じる反面、同時に彼らの思想と主張が深く心に突き刺さってくる貴重なライヴ盤なのだ。