Gulch(ガルチ)
『Impenetrable Cerebral Fortress(インペナトゥラブル・セリブラル・フォートゥレス)』

カルフォルニア州サンタクルス出身の新世代ハードコア・バンドの20年に発表されたデビュー作。CODE ORENGE(コード・オレンジ)やVein(ヴェイン)、Full Of Hell(フル・オブ・ヘル)、Nails(ネイルズ)やSunami(スナミ)らと並び、ハードコアの最前線にいるバンド。

クラストにパワーバイオレンス、デスメタル、Swans(スワンズ)から進化したRorschach系のノイズロック、ブラストビートやメタルコアをミキサーにぶち込み、不吉で禍々しいカオティックなハードコアに仕立てたサウンドが、Gulch(ガルチ)の特徴だ。

メタリックで重たいノイズギターの嵐のなか、恐怖と高揚が入り混じった野獣のような叫び声のボーカルと、ハイテンションでけたたましいスピードのドラムが荒れ狂い、発狂にも似た感情を喚起していく。

歌詞は、妄想からくる不安や恐怖など、病んだ精神状態について歌っている。“Self-Inflicted Mental Terror(自慰行為による精神的恐怖)”や“Lie, Deny, Sanctify(嘘、拒否、神聖化する)”など、悪とみなされている行為を正当化したり、快楽を精神的恐怖に感じるなど、パラノイア・クリティックな偏執病的な内面世界を描いている。まるでシュルレアリスムの画家のような病的で神秘的な内面世界がそこにはある。

8曲目の“Sin In My Heart(私の心の罪)”は、Siouxsie & the Banshees(スージー・アンド・ザ・バンシーズ)のカヴァー曲で、よりダークで、よりヘヴィーに、絶望的なまでに病的にクールなアレンジに仕上がっている。パラノイアティックな病的な世界をノージーでカオティックなハードコアに落とし込み、価値観を提示した。まぎれもなく新生代を代表するハードコアのひとつだ。