Hot Water Music(ホット・ウォーター・ミュージック)
『Feel the Void(フィール・ザ・ヴォイド)』

90年代を代表するエモーショナル・ハードコア・バンドのレジェンド、Hot Water Music(ホット・ウォーター・ミュージック)のじつに5年ぶりとなる9作目。

エモーショナル・ハードコアと呼ばれていた全盛期のころの『No Division(ノー・ディヴィジョン)』や『A Flight and a Crash(ア・フライト・アンド・ア・クラッシュ)』などの作品では、男くさく攻撃的なサウンドで、シュールレアリスムや精神病の患者のような、錯乱し病んだ精神状態を歌っていた。

成熟期の作品である『Exister(エクシャター)』から、ブルースやBruce Springsteen(ブルース・スプリングティーン)や70年代ロックをメロディック・パンクに取り入れ、枯れた円熟味を前面に出すサウンド路線を展開していた。

日本語で『Feel the Void(虚無感を感じる)』という意味の今作では、壮年期ならではの感情にあふれた作品に仕上がっている。前作と比べると、Chuck Ragan(チャック・ラガン)のボーカルはさらにざらざらしたかすれ声の歌声に変わり、憂鬱で暗く陰りのあるメロディック・ギターが印象的な作品に仕上がっている。

『Feel the Void(虚無感を感じる)』というアルバムタイトルが示す通り、壮年期ならではの自分との闘いがテーマになっている。“Collect Your Things and Run(コレクト・ユア・シングス・アンド・ラン)”では、<自分を見失うな!地獄はない>と歌い、“Habitual”では、<あなたの境遇には同情する でも行動しろ! 振り返って人生を無駄してはいけない>と歌っている。

そこには人生がうまくいっていない人たちの挫折や憤りや嘆きなどの人生経験が語られている。だが、けっして人生をあきらめることなく、暗く歪んだ不幸の境遇というクレパスから、希望の光が指し込める崖の上をめがけて、必死に登るような気迫にあふれている。うまくいかな人生と闘っていく闘争心にあふれた作品なのだ。

Hot Water Music(ホット・ウォーター・ミュージック)とは、いままで人生の生きざまそのものを作品に反映させたバンドだが、壮年期になった現在の心境を表現した今作も素晴らしかった。残された人生が短くても、あきらめず闘い前へ進んでいく。その素晴らしい精神姿勢の作品だ。