R.A.M.B.O.(ランボー)
『Defy Extinction(デファイ・イクステンション)』

フィラデルフィア出身のハードコア・バンドのじつに16年ぶりとなる3作目。サバイバルという究極のD.I.Y精神を持ったバンドで、初期のころはユースクルー系のストレートエッジ・ハードコアだったが、『Caustic Christ(コースティック・クライスト)』ではファストコア、『Bring It!(ブリング・イット!)』エモーショナル・ハードコアにマスコアなど、いろいろなジャンルの作品を発表し、ハードコアという枠のなかで、幅広いサウンドを展開していた。

そのアティテュードは、映画ランボーのような、平和な世界から隔絶された世界で生きる戦闘兵と、戦闘兵を社会の異物として扱い排除しようとする大都市とのギャップを描いた世界。“Ian MacKaye’s My Savior, Not Jesus(私の救い主はイアン・マッケイでキリストではない)”や、“Jesus’ Middle Name Does Not Stand For Hardcore(イエスのミドルネームはハードコアの略ではない)”では、インテリジェンスや常識とバカバカしさを組み合わせたユーモアにあふれた内容が印象的だ。シリアスでありながらもそれが滑稽にも映るギャップにも似たカルチャーショックが、彼らの特徴なのだ。

今作ではエモーショナルハードコアとメロディック・パンクの中間にあるサウンドに変化している。前作よりもメロディックに変化し、エモの荒々しいギターと冷たく光るメロディーが交錯するメロディック・パンクな作品に仕上がっている。熱く男くさいボーカルとOiのコーラス。そこに怪しく鈍く光るメロディックな輝き。前へ攻撃的に向かっていく熱い衝動と、倦怠感に満ちた退廃的な感情が見え隠れするようなコントラストがある。

今作では、金もうけという資本主義の下で環境破壊が行われる、人間活動への非難がテーマになっている。“New World Vultures(新世界のハゲワシ)”では、ドラマ『ハゲタカ』のような、富を搾取し環境を破壊する、資本家を強烈な批判を込めて歌っている。そこには大自然の野生動物の生態と人間のビジネス活動を掛け合わせながら、ユーモアを交え人間活動の醜さを浮き彫りにし、人間が推し進める環境破壊から自然を守ろうとする姿勢がある。

サウンド的にはメロディックになり丸くなった印象を受けるが、独特なユーモアは健在だし、なにより彼らしかないランボーのようなサバイバル・ハードコアという強烈な個性があり、今作も面白い作品だ。