NOFX(ノーエフエックス)
『Double Album(ダブル・アルバム)』

正式な発表こそしていないが、今年の9月に40年に及んだ活動を終わりにすると宣言したNOFX(ノーエフエックス)の、事実上ラストとなる18枚目の作品。今作は昨年発表された『Single Album(シングル・アルバム)』の続編とされるアルバムで、同じ時期にレコーディングされた作品だ。FAT MAKE(ファット・マイク)の発言によれば、PINK FLOYD(ピンクフロイド)の『The Wall(ザ・ウォール)』のような2枚組のアルバムを作りたく制作したそうだ。

『Single Album(シングル・アルバム)』と『Double Album (ダブル・アルバム)』2作とも、スピーディーな曲に、メロディックなギター、ラウドなサウンドというメロコアの3拍子に、レゲェ―や牧歌的なアコースティックなどのいろいろなフレーバーを加えたいつものNOFX節のメロコアに変わりはない。だが退廃的で暗い印象があった『Single Album(シングル・アルバム)』と比べると、『Double Album (ダブル・アルバム)』がカラッと明るい印象的を受ける。

『Single Album(シングル・アルバム)』では、セックスとドラッグによる死と、FAT MAKE(ファット・マイク)が実際に経験したドラッグとアルコールによって引き起こされたどん底の状況について、赤裸々に語っていた。そのためアルバム全体に陰鬱なムードが漂っていた。だが『Double Album (ダブル・アルバム)』では、うって変わってNOFXのパンク・アティテュードがさく裂した作品に仕上がっている。

サウンドはカラッと明るくスピーディーなメロコア。Bad Religion(バッド・レリジョン)ばりのメロディックなコーラスから、レゲェ―ナンバーなど、相変わらずNOFX節がさく裂したメロコア。変わった曲では昔前に流行ったデジタルポップと融合したメロディック・パンクな曲もある。アンダーグランド志向というよりも、大衆的なアメリカンポップやメロディック・パンクな曲が今作では多い。

ラストアルバムを意識してなのか、歌詞はNOFXらしいユーモアに富んだ内容が多い。“Punk Rock Cliché(パンク・ロック・クリシェ)”は、もともと Blink182(ブリンク182) の『California(カルフォルニア)』に収録される予定だった同曲名のタイトルをパクリ、仲の悪いBlink182(ブリンク182)をおちょくった内容を歌っている。“Darby Crashing Your Party(ダービー・クラッシング・ユア・パーティー)”では、西海岸ハードコアの創始者で破滅的な生き方で自殺したGERMS(ジャームス)のDarby Crash(ダービー・クラッシュ)へのオマージュで、自己破壊的なFAT MAKE(ファット・マイク)の人生観を照らし合わせ、明るく皮肉に満ちたジョークで笑いながら語っている。 “Is It Too Soon if Time is Relative(時間が相対的なら早すぎるだろうか)”では、現在亡くなっているスティーブン・ホーキングを陽気におちょくりながら、最後まで、毒に満ちたユーモアと、皮肉に満ちたジョークを歌っている。まるで、漫画『まことちゃん』のように・恐怖をジョークで語り、おふざけで終始完結している。

情けや同情はいらない。惜しまれつつ解散するつもりもさらさらにない。軽蔑され嫌われながら辞めたい。女装することによって目覚めたマゾスティックな感情を最後まで貫く。そんなNOFXのパンク魂の集大成ともいえる作品なのだ。