Punitive Damage(ピューニティヴ・ダメージ)
『This is the Blackout(ディス・イズ・ザ・ブラックアウト)』

カナダはバンクーバーとアメリカのシアトルにまたがる地方出身のハードコア・パンク・バンドのデビュー作。

4枚のシングルを経て発表されたデビュー作では、相変わらず女性ボーカルSteph Jerkova(ステフ・ジェコヴァ)の、のどが壊れるようなヒステリックな金切り声で怒りをシャウトするボーカルが際立っている。

サウンドのベースにあるのは、Discharge(ディスチャージ)直系の速くてアグレッシヴなUKハードコア・パンク。そこに、IGGY AND THE STOOGES(イギー・アンド・ザ・ストゥ―ジーズ)やBruce Springsteen (ブルース・スプリングスティーン)、The Rolling Stones (ザ・ローリング・ストーンズ)、Elvis Presley (エルヴィス・プレスリー)などの古典的なロックのギターフレーズを取り入れ、気を失いそうなほど尋常でないテンションのなか、アグレッシヴで扇情的にまとめ上げている。

歌詞の内容は、Steph Jerkova(ステフ・ジェコヴァ)自身がメキシコ移民で、移民として感じた孤立や摩擦について歌っている。アメリカ社会に受け入れてもらえないことに対する怒りや、差別への怒り、人間としての権利をもらえないことへの怒りなど、直截的な言葉で、怒りの言葉を綴っている。

これほど、尋常でないテンションで怒りをぶつけるハードコア・バンドもいまどき珍しい。今年聞いた作品のなかで、尋常でないテンションと怒りに満ちた作品は何かと聞かれたら、Punitive Damage(ピューニティヴ・ダメージ)の『This is the Blackout(ディス・イズ・ザ・ブラックアウト)』と答えるだろう。それほどものすごいテンションの高さに満ちた作品なのだ。