Generacion Suicida(ジェネラシオン・スイシーダ)
『REGENERACION(リジェネ―ション)』

昨年の5月に発表されたロスアンゼルス出身のパンク・バンドの5作目。パンク的なギターの激しさはないスウェーデンのMASSHYSTERI(マシストリー)に似たポスト・パンクを展開しているバンド。歌詞はすべてスペイン語で歌われており、哀愁漂うスパニッシュギターと、ポスト・パンクのような音の空間を活かしたシュールなサウンドが魅力。

前作の『REFLEJOS(レフレホ)』以降、いままでアコースティック・ギターの軽快なサウンドから、パンクの激しいギターに変わった。今作でもそのサウンド路線を踏襲。さらにメロディーに力を入れた作品に仕上がっている。スパニッシュ・メロディーこそなくなったが、とくに黒い背景の万華鏡のように暗闇できらめくメロディーが印象的で、神秘で幻想的な美しさがそこにはある。美しくポップで心安らぐメロディーだが、そこには虐げられた悲しみと苦しみに満ちた感情が漂っている。

その虐げられた悲しみと苦しみとは、人種差別にフォーカスした歌詞にある。“BALAS, SIEMPRE BALAS(バラス,シンプリ・バラス)”では<有色人種の同胞たちは抑圧でも苦しんでいる>と歌い、“VIOLENCIA(バイラオール)”では<心の暴力を止めてください 理由のない暴力を止めてください>と歌い、“ME ESTAN BUSCANDO(ミ・エスタン・ブスカント)”では<拒絶された人生、同胞たちの純粋な叫び>と歌っている。

そこには人種差別による強烈な虐げられた被害者意識や、アイデンティティ・クライシスによる、悲しみや苦しみがある。人に差別される自分はなに物なのか?私たちは救われる日が来るのか?そんな悶えや苦しみや悲しみが美しいメロディーと独特なハーモニーを生み出している。

悲劇に満ちた陰りのある美しいメロディー。シンプルなパンクだが、いままでのアメリカ・イギリス・日本的のパンクバンドには絶対に出すことのできない独特なメロディーだ。個人的にはこのメロディーはかなり好きだ。いいバンドだ。