Cattle Decapitation(キャトル・デカピテイション)
『TERRASITE(テラサイト)』

じつに3年ぶりとなる9作目。96年の結成以来、動物虐待の悲惨な恐怖、人類による環境破壊、人間が工場で飼育され大量虐殺される世界など、アニマルライツや環境保全、ヴィーガン・ストレートエッジという観点で、様々なテーマを取り上げていた。

今作のタイトルは、地球を意味すると、ギリシャ語で食べ物を意味するに変え組み合わせた造語で、<地球を食べる人>を意味する。さらににはパラサイト(寄生虫)の意味も含んでおり、地球の資源を食い尽くし環境破壊をする人間を害虫の比喩として醜いクリーチャーの姿をしている。環境への負荷を続けてきた人間が、クリーチャーに転生し、地球を滅ぼす存在として、欲望の赴くままに環境破壊をしつくすことがテーマになっている。

今作では昼間のホラーがサウンドコンセプトになっているそうだ。今作でもプロミングドラムのような連射ドラムを中心としたデス・メタル/ゴア・グランドなサウンドを展開している。そこにピアノやシンセや地獄のデス声、クリーボイスからギターソロ、叙情的なメロディーのギターサウンドなどを加え、地球の危機を煽るような壮大なサウンドスケープを描いている。ダークな色彩が強かった前作よりも、絶望的だが明るい色合いのメロディーを取り入れ、ボーカル、ギター、ドラムなどの個々のパーツが明確になったネイキッドなサウンドに変化している。

いままで見えなかったダークな部分が白日の光にさらされることで、より肉体的で迫力のあるサウンドに仕上がっている。裸むき出しのネイキッドなサウンドが、クリーチャーが貪り食い尽くす姿を、白日の下にさらし、おぞましさや怒りを掻き立てるサウンドに仕上げている。最後の曲“Just Another Body(ジャスト・アナザー・ボディー)”では、絶望的なトーンのピアノから、プログラミングドラム、絶叫、デス声、クリーボイスと、危機から絶望に向かっていく物語のように変化していく展開で、デスメタル/ゴアグランドの新境地を開いている。

個人的にCattle Decapitation(キャトル・デカピテイション)というバンドに惹かれる理由は、欲望を貪る人類全体への嫌悪感を、惨殺される動物や醜い生物に置き換え、比喩として人間の愚かさを歌った部分にある。サウンド的にもデスメタル/ゴアグランドのなかで、最先端のサウンドを展開しており、独特な個性を放っていて、今作も素晴らしい作品だ。