Rejoice(リジョイス)
『All Of Heaven’s Luck (オール・オブ・ヘヴンス・ラック)』

オハイオ州コロンバス出身のデビューアルバム。初期のころはConverge (コンヴァージ)のマスロック。地獄の苦しみは痛みではないなどのカオティックな内面世界を表現していた。今作ではブラック・メタルとNails(ネイルズ)のようなノイズ・コアと、サンディエゴのRetox(レトックス)のようなカオティックなハードコアの要素が加わり、よりギターのエッジが尖ったヘヴィーでアグレッシヴなサウンドに進化している。

Integrityの亜種進化と呼ぶべきサウンドで、中世の悪魔主義やダンデの新曲のような世界観を追求していたIntegrityとは違い、ムンクの叫びのようなドロドロとした内面世界をRejoiceは表現している。

歌詞のテーマは、資本主義による地球の破壊、地球を変えつつある超富裕層の寄生的な傾向、超富裕層による一般人の没落など。内面世界を追求していた前作と比べると、現実世界へ変化している。

“Malevolent Deities”では<収益のために生き、死ぬ~労働者階級のイエスは死んで破産した>と歌っている。「アルコール依存症」「神経症」「死」「絶望」「孤独」など、人間が抱える不安を可視化したムンクの叫びが、「搾取」「過労」など資本家が庶民階級層に奴隷化される精神不安と苦痛に入れ替わっている。紫色に塗られた人物画のアルバムジャケットには、資本家の際限なき欲望を貪り搾取する病んだ傲慢さが漂っている。

ブラックメタルやハードコアのリフなどの多彩なギターアレンジと、怒りや不安や苛立ちなどの感情が目まぐるしく入れ替わっていく。マスコアがおどろしくドロドロと進化した作品。