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Brain Damage In The Middle East(ブレイン・ダメージ・イン・ザ・ミドル・イースト)

イラン出身のハードコア/パンク・バンドのデビューEP。The Exploited(エクスプロイデッド)やDischarge (ディスチャージ)などのUKハードコアからの影響が強い激しく尋常でないテンションのサウンドで、怒りや憤りといった感情を歌っている。

モコモコとした音やブラストビートなどを交えた変則的なリズムのドラムに、甲高い絶叫のヴォーカル、ハードコアのノイジーなギターが、金属がすれるような独特な音を奏で、テクニカルな要素に詰め込んだ。2ビートのファストな曲が、クラストなどが変幻自在に変わっていくなど、ローカル進化を遂げた独特なサウンドを展開している。

歌詞は、モスクに強制的に連れていかれることに疑問を持った「C.R.E.A.M.(クリーム)」から、処刑、殺人、肉体を貫く銃弾など、ファシストへの怒りを歌った「Murderer(マーダー)」、 俺に何をしろとか言うなと、人種差別について歌った「Misanthrope (人間嫌い)」、テロリスト、俺を刑務所に放り込むと、帝国主義への怒りを歌った「No Man’s Life(ノー・マンズ・ライフ)」など、イランという自由のない国に住んでいる憤りや葛藤、息苦しさを歌っている。

10年位前にアメリカでタクヮコアというムスリムによるハードコア・シーンがあったが、そこでも感じたジレンマや憤りが、ここでも感じる。アメリカというグローバルな世界秩序に対する怒り、イランという自由のない国に対する怒り、二律背反する感情が、やるせない気持ちや、葛藤や逡巡、憤りとなって襲い掛かってくる。やり場のない怒りに満ちた作品なのだ。