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ベトナムはホーチミン出身のメタリックハードコア・バンドの14作目となるシングル。Knocked Loose(ノックド・ルーズ)やKublai Khan TX(クビライ・カーンTX)、Stray From the Path(ストレイ・フロム・ザ・パス)、Boundaries(バウンダリーズ)、Justice for the Damned(ジャスティス・フォー・ザ・ダムド)など流行の最先端を行くハードコアに影響を受けたメタリック・ハードコア。
東南アジアだからといって、けっして遅れているわけではない。Turnstile(ターンスタイル)やAlphawolf(アルファウルフ)といったハードコアの最先端にいるバンドたちとツアーを重ねた結果、亜種進化を遂げたハイブリットなサウンドを展開している。ビートダウン・ハードコアをルーツとしながらも、今作では最先端のメタリック・ハードコア度がさらに増し、パワーアップしている。
ホラー映画のようなダークアンビエントとメタリック・ハードコアの強烈なブラストビートと金属的で屈強なノイジーなリフを融合した「I Am (Kiss of Forgiveness)アイ・アム(キッス・オブ・フォーギブネス)」では、スリルと恐怖と暴力が入り混じった暴虐なメタリック・ハードコア・サウンドを奏でている。
日本のメタルコア・バンドPrompts(プロンプツ)をゲストに迎えた「Sad Melody(サッド・メロディー)」では、絶叫と怒声のシンガロング・ヴォーカルで、叩き潰すような重いメタリック・ギターとブラストビート、神経質なギターが織りなすコントラストが印象的。「悲しいメロディー」という意味のタイトルの割には超攻撃的なメタリック・ハードコアなサウンドを展開している。
そして実験的なサウンド「A Broken Symbol(ア・ブロークン・シンボル)」では、こちらも叩き潰すような重いメタリック・ギターと、ニューメタルの要素が強いスクラッチやクリーン・ボーカルを取り入れ、破壊的なメタリック・ハードコアにダークアンビエントな世界観を加え、幻想的かつ退廃的で廃墟の美しさのようなブレードランナーのような世界をイメージさせる。
アルバムジャケットには、11~13世紀のベトナム王朝である李朝の龍の絵を採用。ベトナム最古の龍の絵のひとつで、太陽と雨を生み出し、人々に繁栄をもたらすという意味があるそうだ。しかしこの龍の絵は忘れ去られ、他のイメージやシンボルに取って代わられた。本作のタイトルである『第1章:失われた創造主』の意味とは、この龍の絵ことを指している。ベトナム古来の伝統やアイデンティティを大切にしながらも、最先端のグローバルな価値観を融合。かつて日本のバンドたちがアメリカやイギリスなどの音楽に挑んだときのような、いままでになかった新しいものを作り出そうとする熱意と勢いを感じる作品だ。